2008 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖タイミングの変異を介した生殖隔離の生態遺伝学的解析
Project/Area Number |
19370011
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮竹 貴久 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 教授 (80332790)
|
Keywords | 種分化 / 生殖隔離 / 交尾時刻 / 時計遺伝子 / アミノ酸置換 / ウリミバエ / cryptochrome / SNIP解析 |
Research Abstract |
(1)交尾する時刻(繁殖のタイミング)が大幅にずれたため、生殖隔離の認められるウリミバエのショート系統(S)とロング系統(L)について時計遺伝子の塩基配列を比較した。光入力系に関与するcry遺伝子では2個のアミノ酸置換(285番目がSではArg、LではLys、502番目がSではLys、LではAsn)がコード領域内に見られた。この2サイトについてSNIP解析を行い、ミバエ飼育集団のアミノ酸置換率を推定した結果、cry遺伝子502番目アミノ酸がLysに置換した集団は、Asnである集団に比べ概日周期長と発育期間が長く、交尾時刻が遅かった。また表現型変異が中間に位置する集団では、この2サイトはヘテロであり、交配隔離への関与が強く示唆された。さらに今年度は不妊化したウリミバエのS系統とL系統を岡山大に空輸し、cry遺伝子の脳内発現量の定量的PCR解析も行った。その結果、cry遺伝子の脳内発現周期はS系統とL系統で有意に異なった。この結果は、cry遺伝子がウリミバエの繁殖タイミングに関与することを示唆する。(3)今年度は新たな時計遺伝子(cyc; cycle)についてもcDNAの全長のクローニングを行った。その結果、S系統の5'側の5クローン中4クローンにおいて、533番目と534番目の塩基の間に65の塩基挿入箇所が見られた。この変異は別の時計遺伝子clockとの二量体結合に関与するPAS領域も含んでいる。よって、これらのアミノ酸が翻訳されないとタンパク質が正常に機能せず、ウリミバエの繁殖タイミングに影響を与える可能性がある。(4)dbtについては、キイロショウジョウバエへのウリミバエ時計遺伝子の導入し、ウリミバエdbtを持つキイロショウジョウバエの概日リズムを解析したが、概日リズムの変化が認められなかった。ウリミバエの繁殖のタイミングを左右する時計遺伝子がdoubletimeではなかった。
|
Research Products
(6 results)