2010 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖タイミングの変異を介した生殖隔離の生態遺伝学的解析
Project/Area Number |
19370011
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮竹 貴久 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (80332790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 顕 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40229539)
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Keywords | 時計遺伝子 / 生殖隔離 / 種分化 / ウリミバエ / キイロショウジョウバエ / ゲノムワイドスクリーニング / 交尾行動 / 概日リズム |
Research Abstract |
繁殖するタイミングの違いによ,て生殖隔離が生じるウリミバエの2つの集団(ひとつは早い時刻に交尾する集団であり、もうひとつは遅い時刻に交尾する集団である)の時計遺伝の比較を行った。これまでの成績からCryprocrome遺伝子がウリミバエの交尾時刻を左右する候補遺伝子として絞り込まれたので、今年度は、Cryprocrome遺伝子について交尾開始時刻の著しく異なる書t-と系統とロング系統の全塩基配列の解読を行った。その結果、この遺伝子の2つの塩基サイトcry1212とcry1865の置換が概日リズムの変異とかかわることが明らかとなった。そこで、概日リズムと交尾時刻が異なる7つのウリミバエ飼育集団で、この2つのサイトの塩基置換率と歩行活動の概日周期の相関解析を試みた。その結果、cry1212とcry1865の2つのサイトともに、ショートタイプの対立遺伝子置換率と概日リズムとの間に有意な相関を検出できた。また、cry遺伝子のmRNA発現解析を行ったところ、交尾時間の著しく異なるショート系統とロング系統では、cry遺伝子のmRNA発現の日内変動に有意な違いが見られ、12L12Dの照明条件下において、交尾時刻の早いショート系統ではmRNAの発現量が日没前に高くなるのに対して、交尾が日没後に生じるロング系統ではmRNAの発現量も日没後に高くなった。これらの発見は、ウリミバエにおいては、時計関連の遺伝子のうち、光入力系のクリプトクローム遺伝子と概日リズムの変異の関係そ強く示唆するものであり、クリプトクローム遺伝子の特定の点突然変異塩基置換が、交尾時刻の変異を介して、繁殖のタイミングをずらすことで、生殖隔離を引き起こす可能性を持つことを明らかにした。また今年度はウリミバエ以外に複数の甲虫類やカメムシ類についても繁殖のタイミングが各種の生殖行動に及ぼす影響についても調べた。
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