2007 Fiscal Year Annual Research Report
発芽の鍵を握るラジカルスカベンジャーの機能解析と応用
Project/Area Number |
19380014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 眞理 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 教授 (60091394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯淺 高志 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (40312269)
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Keywords | コムギ / 穂発芽 / 自由水 / 過酸化水素 / アスコルビン酸 |
Research Abstract |
イネ科作物では、登熟期の降雨や低温が引き金となり植物体上で子実が一斉に発芽する「穂発芽」が見られることがある。収穫期が梅雨と重なる日本ではこの現象は特に深刻な問題となっている。穂発芽特性は、種子の休眠性が大きな要因となり、休眠が浅いと穂発芽を引き起こし、逆に休眠が深いと発芽の均一性が失われ、いずれも栽培する上では望ましくない特性である。種子休眠は気象要因に加え子実内の水、植物ホルモンであるジベレリンやアブシジン酸の拮抗作用と複雑に関連するため、穂発芽の回避技術の構築は困難を極めていた。穂発芽しやすい性質をもつ"シロガネコムギ"は製粉特性が優れているため国内で広く栽培されており、穂発芽抵抗性の"農林61号"と比較した。その結果、登熟後期では、穂発芽抵抗性の品種では含水率は変わらないのに関わらず自由水を失い結合水のみに代わる時期が14日早かった。登熟中の子実において、結合水の状態に1日でも早く変わることは、穂発芽耐性の獲得に有効であることを示唆したことから、本研究に2つの品種を供試した。 一方で、ムギ類の播種時の発芽を揃えるため、種子の過酸化水素(H_2O_2)処理が施されることがあるが、必ずしもその機構は解明されていなかった。吸水後のコムギおよびオオムギ種子のアリューロン細胞で生成される過酸化水素は、抗酸化物質であるアスコルピン酸により消去された。子実の登熟過程において、穂発芽抵抗性の"農林61号"の特性として、アスニルビン酸による発芽抑制効果が登熟後期の28日目から顕著となり、過酸化水素を消去するカタラーゼ活性が著しく高くなることを明らかにした。また、水ストレスに対応するササゲのアクアポリンの機能に関する研究も合わせて行った。
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