Research Abstract |
LolCDE複合体は,基質結合型として精製できる唯一のABCトランスポーターである。基質結合型LolCDEを用い,シングルサイクルのリポ蛋白質受け渡し反応を解析する実験系を確立した。反応機序は,(1)リポ蛋白質がLolCDEに結合し,ATPに対する親和性が上昇する。(2)ATPの結合でリポ蛋白質との疎水的結合が弱くなる。(3)ATPが加水分解され,LolAに依存してリポ蛋白質が細胞質膜から遊離し,LolAと結合する。(4)ADPと無機リン酸が解離し,次の反応サイクルが起きる。なお,バナジン酸はシングルサイクルの反応を阻害しないことから,バナジン酸存在下でもATPの加水分解エネルギーはLolCDEに保存されLolAに依存してリポ蛋白質は遊離すると考えられる。 LolAからLolBにリポ蛋白質が受け渡される反応の詳細を,BIA coreを用いた表面プラズモン共鳴法によって解析する実験系を構築した。その結果,LolAはリポ蛋白質を結合することにより,LolBとの親和性が大幅に上昇することを明らかにした。 緑膿菌におけるリポ蛋白質の外膜輸送は,大腸菌と同様5種類のLol因子からなるLolシステムが司っていることを明らかにした。緑膿菌でも大腸菌と同様+2位のAspは内膜シグナルとして働くこと,一方,大部分の内膜リポ蛋白質は+3,+4位のアミノ酸残基がシグナルとなっていることを明らかにした。
|