Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深町 加津枝 京都府立大学, 人間環境学部, 准教授 (20353831)
小椋 純一 京都精華大学, 人文社会学部, 教授 (60141503)
佐々木 尚子 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (50425427)
佐野 淳之 鳥取大学, 農学部, 教授 (60283975)
大住 克博 森林総合研究所, 関西支所, 地域研究監 (60353611)
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Research Abstract |
1.野火と植生に関する基礎研究 (1)過去の植生への火の影響などを知る上で、泥炭や土壌に含まれる微粒炭は重要な手がかりになる微粒炭の基礎研究を進め、微粒炭の長短軸比や燃焼温度条件の違いによる微粒炭の形態変化について明らかにした。 (2)アカマツ林が山火により全焼した後、5年経過した場所に更新したブナ科高木種を調べた。それぞれのコードラートで、コナラは出現したブナ科高木種の96.2%、93.5%を占め、それぞれのコナラ個体群のうち、88%、91.8%は萌芽しており、山火前に侵入していた前生稚幼樹であるものと推定された。この山火事を引き金に、アカマツ林はコナラが優占する林分に大きく変化していくことが推定された。 2.野火と植生の歴史 (1)宮崎県椎葉村に近い御池湿原,奈良県曽爾高原お亀池湿原,滋賀県布施溜,曽根沼,京都市深泥池,八丁平湿原,丹波山地の蛇ヶ池湿原,丹後半島大フケ等から採取した堆積物の,花粉分析,微粒炭分析,植物珪酸体分析,放射性炭素年代測定を行い,これらの地点周辺における火事と植生の歴史の解明を進めた。 琵琶湖,京都盆地周辺では完新世の初期に火事が多発し,一部ではクリ林が発達した。また,琵琶湖東岸の低地では約3000年前以降に,火事が多発し,約2500年前には稲作が始まった。また,丹後半島では,約1000年前にはスギの多い植生からマツの二次林へと変化し,この時期から各地でソバの栽培が始まり,焼畑が行われていたと考えられた。 また,走査電子顕微鏡によってコナラ亜属(ナラ類)の花粉形態を比較した結果,コナラ節型,クヌギ節型,ウバメガシ型に区別でき,特にカシワとウバメガシは走査電子顕微鏡によって種まで同定できることが明らかになった。カシワは火事に耐性のある樹種であることから,今後,この成果を花粉分析に適用することによって,火事と植生変遷の関係についての解明が期待される。
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