Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深町 和津枝 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (20353831)
小椋 純一 京都精華大学, 人文社会学部, 教授 (60141503)
佐々木 尚子 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (50425427)
佐野 淳之 鳥取大学, 農学部, 教授 (60283975)
大住 克博 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (60353611)
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Research Abstract |
1. 野火と植生の歴史 九州,中国山地,近畿地方から採取した堆積物の花粉分析,微粒炭分析,年代測定の結果をまとめ,各地における火事と植生の歴史の解明を進めた。九州の御池湿原周辺では後氷期初期に火事が多発し,7000年前以降にブナ林が成立した。近畿地方では1万年前前後に琵琶湖集水域において火事が頻発していた。この時期は落葉広葉樹の拡大期であるが,耐火性のあるカシワの増加が認められた。後氷期後期になると,琵琶湖東岸の低地帯では,約3000年前から火事が増加し,約2500年前からは稲作が始まった。約1000年前になると,近畿地方の各地で,火事の増加と共に植生は大きく変化し,マツや陽樹の落葉広葉樹が増加し二次林化する。この植生の変化と共に,多くの地点で,栽培植物であるソバ属の花粉が出現することから,焼畑によって森林が破壊されソバ栽培が行われたと考えられた。 2. 火入れと植生遷移 毎年火入れを受けている場所では,樹木が成長できず、見かけ上草原となっている場所が多い。樹木も火入れ後に萌芽によってシュートを伸ばしてくるが、毎年地上部は焼かれるため、地下部だけ肥大してくる。主な出現樹種は、ブナ科のコナラ、カシワ、ミズナラ、クヌギ、クリなどである。火入れ跡地では、初めはクリやカシワが多いが、遷移が進むにつれて成長の速いコナラが優占した。 また,コナラの萌芽幹は、若く小さなサイズでも高い種子繁殖能力を持ち,山火跡の森林の更新・再生過程において有利であることが示された。 3. 里山景観の変遷 丹後半島では,比較的急峻な斜面の中腹より下部で焼畑が小面積で行われ,ソバ,アズキなどが順番に栽培されていた。また,湖西地方では,20世紀初頭には,アカマツ林,ナラ林が用材や薪炭として利用され,また,屋根材として利用するススキなどの生育する採草地なども存在したことが示された。
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