2009 Fiscal Year Annual Research Report
移入樹種植林がもたらす侵入溶解の群集レベルでの解明
Project/Area Number |
19380094
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
尾崎 研一 Forestry and Forest Products Research Institute, 北海道支所, 主任研究員 (50343794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 明良 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (90353599)
佐山 勝彦 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (70353711)
飯田 滋生 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (10370272)
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Keywords | 侵入溶解 / 移入種問題 / 移入樹種植林 / 生物多様性 / 蛾類群集 / 食草 |
Research Abstract |
外来種の植林が他の外来種の侵入や、在来種の多様性に与える影響を明らかにするために、カラマツ植林が森林の蛾類と林床植物に与える影響を北海道と山梨で比較した。カラマツは北海道では(国内)外来種、山梨では在来種である。 北海道内のカラマツ人工林、トドマツ人工林、落葉広葉樹天然林において蛾類と林床植物を調査した結果、697種の蛾類と267種の植物が記録された。このうち外来種は蛾類で6種、植物で12種であった。外来種のうちカラマツ食の蛾類3種はカラマツ林で個体数が多く全体の15%を占めた。しかし、これ以外の外来種の個体数は少なく、まれにしか記録されなかった。つまり、カラマツの植林によりカラマツ食の蛾類の侵入が促進されていた。次に在来種への影響をみると、蛾類の場合、林分あたりの種数は天然林の方が約2割多かった。蛾類の食性別にみると、天然林では広葉樹食種の種数と個体数が、人工林では針葉樹食種の種数と個体数が多かったが、木本食以外の種には違いがなかった。一方、林床植物の場合、林分あたりの種数はトドマツ林が最も多く、天然林とカラマツ林では違いがなかった。 山梨県のカラマツ人工林と落葉広葉樹天然林で蛾類と林床植物を調査した結果、569種の蛾類と288種の植物が記録された。このうち外来種は植物が2種だけで蛾類では記録されなかった。蛾類の場合、各林分の種数は天然林で約2割多かった。蛾類の食性別にみると、天然林では広葉樹食種の種数と個体数が、人工林では針葉樹食種の種数と個体数が多かったが、木本食以外の種には違いがなかった。一方、林床植物の場合、各林分の種数はカラマツ林で約2割多かった。以上をまとめると、北海道では外来種であるカラマツの植林によりカラマツ種の蛾類の侵入が促進されていた。また、カラマツの植林が在来種に及ぼす影響は群集レベルでは自生地である山梨県と変わらなかった。
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