Research Abstract |
ミナミハンドウイルカの分布をはじめて示唆した,2008年鳥島海域調査データの解析を進め,得られた個体識別写真を用いて,すでに本種の分布が知られている東京都御蔵島.小笠原,天草海域との照合作業を行った.その結果,鳥島での識別個体26頭のうち少なくとも1頭が小笠原諸島で識別されている個体と一致し,海域間の交流の可能性が示唆された,鳥島以外では,2009年5月と2010年3月に奄美大島・大島海峡と新たに同島北部においてフェリー等を用いた目視調査,および現地漁業者等へのインタビュー調査を行い,本種の島周りでの分布に関する情報収集ができた.また,2009年5月,長崎大学水産学部練習船鶴洋丸を利用して対馬沿岸の目視調査を行った.上対馬鬼崎から西側沿岸,浅茅湾,下対馬沿岸を経由し,長崎鼻周辺に至る114海里を沿岸0.5海里内で本種を探査したが発見はなかった.生理学的研究では,本種の繁殖の季節性を明らかにするため,過去5年間の成熟オス4頭の血液試料の提供を水族館から受け,テストステロン濃度の測定を行った.その結果,いずれの個体も春から秋に高値を示し,この時期に精子形成が活発になることが示唆されるともに,対象個体の年齢から少なくとも40歳頃までは精子形成機能が生理的には十分備わっていることが推測された.2010年2~3月,御蔵島周辺海域においてDNA抽出用糞試料の採取を行い,43個の糞を採取した(うち23個体分は既に個体識別されている19個体由来).2007年度末に実施した衛星標識調査については,その後も離脱したロガーの回収はなく,潜水データの記録の入手はほぼ不可能となった.本種の行動と他種との行動比較のため,野生下および飼育下のイルカ5種(ミナミハンドウイルカ,ガンジスカワイルカ,スナメリ,シャチ,イロワケイルカ)の行動観察を行った.
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