Research Abstract |
平成21年度の代表的な研究成果は以下のとおりである. 急速な少子高齢化とそれに伴う人口減少は,日本における最も重要な社会問題の一つである.少子高齢化は,消費を計画し実行する主体である家計の構成や特徴を変化させ,それらの変化は,家計における子供の数や高齢者の数など人口統計学的変数の変動に反映される.人口統計学的変数は家計需要(以下,需要)に影響する代表的な要因の一つであるから,少子高齢化が需要に対して何らかの影響を与えることは容易に推察できる. 一方,地球温暖化が深刻な環境問題としてクローズアップされている.地球温暖化は今世紀最大の環境問題ともいわれ,地球温暖化が原因と思われる気象変化が様々な形で顕在化してきている.地球温暖化の経済的影響は多岐にわたり,家計の需要も直接的な影響を受ける. 以上のような背景を踏まえ,日本の都市別・月別の疑似パネルデータを用い,人口統計学的変数と気象変数が食料需要に与える影響に注目して需要システムを推定した.その結果,人口の少子化と高齢化が各費目の需要に与える影響,また地球温暖化による気温の上昇傾向が各費目の需要に与える月別の影響が定量的に明らかになった. 特に長期的な視点でみると,少子化は,魚介類,野菜・海藻,酒類の需要にプラスの影響を与え,菓子類,乳卵類,飲料,および外食の需要にマイナスの影響を与えること,また高齢化は,魚介類,乳卵類,野菜・海藻,および果物の需要にプラスの影響を与え,肉類と外食の需要にマイナスの影響を与えることが示唆された. 一方,地球温暖化は,飲料,酒類,および外食にはプラスの影響,穀類,魚介類,肉類,野菜・海藻,油脂・調味料,菓子類,および調理食品にはマイナスの影響を与え,乳卵類と果物には季節により異なる方向の影響を与えることが示された.
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