2009 Fiscal Year Annual Research Report
犬における造血幹細胞を用いた自家骨髄移植療法の開発
Project/Area Number |
19380175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻本 元 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 耕一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90294660)
藤野 泰人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70401180)
後藤 裕子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (80436518)
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Keywords | 犬 / ABCB1遺伝子 / 化学療法 / 骨髄移植 / 造血幹細胞 / CD34 / P-糖タンパク / リンパ腫 |
Research Abstract |
小動物臨床においては腫瘍性疾患症例の増加が顕著であり、抗癌剤を用いた化学療法が頻繁に用いられるようになっている。なかでもリンパ腫はその発生頻度が高く、化学療法の奏効率も高い疾患である。しかしながら、通常の化学療法では薬剤強度を上げるとともに骨髄抑制が大きな問題となる。本研究では、化学療法における骨髄抑制を克服することを最終目的として、薬剤耐性骨髄幹細胞の作製を行った。 本年度は、HIVゲノムを骨格とした自己不活化型のレンチウイルスベクター(pWPXL)に、イヌの主要な薬剤排出ポンプであるP-糖タンパク(P-gp)をコードするABCB1(mdr1)遺伝子または蛍光マーカー(GFP)遺伝子を挿入し、これらをパッケージング細胞に導入することによって組み換えレンチウイルス粒子を作製した。一方、イヌの骨髄細胞から抗体コート磁気ビーズ法によって90%以上の純度を有するCD34+細胞を単離し、これらレンチウイルスを感染させた。その結果、ABCB1遺伝子導入細胞はP-gpを基質とする蛍光色素であるRhodamine123を効率よく排出したことから、機能的なP-gpの発現が確認された。次に、メチルセルロースコロニー形成法を行ったところ、ABCB1遺伝子導入CD34+細胞はP-gpの基質となる抗癌剤(ドキソルビシン)存在下でGFP遺伝子導入細胞よりも有意に多い造血細胞コロニーを形成した。これらコロニーは、顆粒球系、マクロファージ系、赤芽球系からなっており、ABCB1遺伝子導入が各種血球系統への分化を阻害しないことが示された。さらに、ドキソルビシンの濃度依存性にP-gp陽性細胞率が上昇することが示された。 以上の結果から、ABCB1遺伝子導入CD34+細胞は化学療法における骨髄抑制を克服するための薬剤耐性造血幹細胞として臨床的に応用できる可能性が示された。
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