2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19380181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
空閑 重則 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60012051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 昌久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (40270897)
木村 聡 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00420224)
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30183619)
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Keywords | セルロース / ナノファイバ / 柔組織 / 一次壁 / 形成層 |
Research Abstract |
セルロースナノファイバを調製する原料として様々な高等植物の柔組織を探索した。各種食用果実の果肉,野菜の組織には乾燥重量比10%程度のセルロース様多糖が含まれることが分かった。この多糖の単離過程では5%以上のNaOHを用いるとフィブリル形状が崩れるため4%にとどめなければならない。そのため,単離固形分には一定量の非グルコース成分が含まれる。そこでこの成分をP-セルロースと呼ぶことにした。P-セルロースを電子顕微鏡で観察するとほとんどの試料で直径3ナノメートル程度の極細フィブリルからなっていた。フィブリル幅を正確に計測するため,極限まで希釈したフィブリル懸濁液を雲母壁開面に展開して貼り付け,原子間力顕微鏡の高さ計測機能を用いる手法を開発した。その結果P-セルロースの多くは2ナノメートル以下,原料の種類によってはけノメートル以下の超極細フィプリルが多数含まれていた。これは従来の定説であった「高等植物セルロースの基本単位はロゼットで合成される3.5ナノメートル幅のフィブリル」という概念を覆すものであり,国際学会において注目された。 これに関連して,木材の一次壁セルロースの性状を調べるため,夏季に活動中の生木の形成層を採取してP-セルロースを得た。AFM観察によれば,これも幅2ナノメートル程度のフィブリルを含んでいた。しかしそのフィブリル形態は採取時期によって異なっていた:5月のものは短く,かつ曲がりくねったフィブリルのみであった。7月分はそれに加えて長い直線状のものが含まれていた。8月になると短いフィブリルが僅かになっていた。これらは木材の一次壁形成の過程と機構に重要な示唆を与えるものである。
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