Research Abstract |
食餌性因子の1つであるクロロゲン酸はコーヒー,プルーン,サツマイモなどに含まれるポリフェノール化合物であり,抗酸化作用を有し健康増進作用に期待が持たれている。実際に高濃度のクロロゲン酸を含んだ健康飲料なども商品化されている。しかし,クロロゲン酸の代謝物であるカフェ酸はIARCでGroup2B(possibly carcinogenic)と評価されており,動物実験により発がん性の報告がある。本研究では,クロロゲン酸の安全性を評価するため,クロロゲン酸のDNA損傷機構を検討した。^<32>Pでラベルしたがん関連遺伝子を用いてDNA損傷性を解析した。クロロゲン酸はCu(II)の存在下でDNAを酸化的に損傷し,NADHの添加により損傷は著しくなり,Mn(II)を加えることにより,DNA損傷はさらに増強した。また,クロロゲン酸によるDNA損傷はカタラーゼ,メチオナール,バソキュプロイン(Cu(I)キレート剤)によって抑制された。クロロゲン酸あるいはカフェ酸によるDNA損傷は同様の塩基特異性が認められ,Tの損傷が強く見られた。カフェ酸はクロロゲン酸に比べDNA損傷性が強かった。電気化学検出器付きHPLCで8-oxodGの生成量を測定したところ,クロロゲン酸はHL-60細胞においてMn(II)の添加により8-oxodG量を有意に増加させ,HP100細胞では増加が認められなかったため,H_2O_2の関与が示唆された。クロロゲン酸は自動酸化の過程でH_2O_2を生成し,Mn(II)存在下で酸化が促進される。さらにNADHの存在下でレドックスサイクルが形成され,DNA損傷が増強したと推定される。クロロゲン酸自体がDNA損傷性を有し,代謝されてカフェ酸となることでさらにDNA損傷性が増すと考えられ,発がん性を含めた安全性のさらなる検討が必要である。
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