2009 Fiscal Year Annual Research Report
発がんにおける肥満と食餌性因子の多段階発がん機構への関与の解明とリスク評価
Project/Area Number |
19390161
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
村田 真理子 Mie University, 大学院・医学系研究科, 教授 (10171141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
及川 伸二 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10277006)
平工 雄介 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
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Keywords | フタル酸エステル / 酸化的DNA損傷 / 女性ホルモン作用 / ペルオキシゾーム増殖 / 脂肪蓄積作用 / 高血糖 / 代謝酵素活性化 / 発がんリスク |
Research Abstract |
フタル酸類はポリ塩化ビニルプラスチック中の可塑剤として使用され、内分泌撹乱作用が懸念されている。di(2-ethylhexyl)フタル酸塩(DEHP)は最も高い生産量があり、げっ歯類の発がん物質として知られる。我々はこの毒性のメカニズムを明確にするため、DEHPによるDNA損傷および遺伝子発現についてヒト培養細胞を用いて検討した。HPLC-ECD分析では、HL-60細胞をDEHPで24時間処理した結果8-oxodG生成が有意に上昇した。また、エストロゲン感受性MCF-7細胞を用いたE-screen assayによりDEHPはエストロゲン活性を示した。定量的リアルタイムRT-PCRを用いた解析では、DEHP24時間処理においてPPARγ発現の有意な上昇を示した。PPARγは脂肪蓄積作用を持ち、肥満を介して女性ホルモンに影響する可能性がある。したがって、DEHPによる8-oxodG生成が発がんのイニシエーションおよびPPARγ発現増強とエストロゲン活性を介した肥満・女性ホルモン作用は発がんのプロモーションとして作用し、発がん、特に女性生殖器系がん、に寄与する可能性が示された。 糖尿病と発癌との関連を背景として、グルコースと過酸化水素の酸化ストレス関連の遺伝子発現への影響について検討した。ヒト前骨髄球性白血病由来HL-60細胞およびその過酸化水素耐性株を用いてグルコースおよび過酸化水素を反応させ、DNA損傷および遺伝子発現を解析した。その結果、過酸化水素を介した酸化的DNA損傷とCYPlAlの発現上昇が認められた。糖尿病の病態である高血糖は活性酸素の生成や酸化ストレスに関与して、さまざまな経路でDNA damageを引き起す。またCYPlAlなどの代謝酵素は、種々の発がん物質を代謝活性化し、DNA損傷、ひいては発がんのリスクを高める可能性が示された。
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