2009 Fiscal Year Annual Research Report
未病を治す医療の確立に向けた薬理基盤の構築に関する研究
Project/Area Number |
19390193
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
宮田 健 Sojo University, 薬学部, 教授 (90040310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
礒濱 洋一郎 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (10240920)
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Keywords | 未病 / 抗MUC1抗体 / 抗腫瘍 / グリチルリチン / インターフェロン-γ |
Research Abstract |
本研究は,無症状の病態や現代医学的には健康と診断される有症状患者など,東洋医学的に未病と呼ばれる半病的状態に対し,科学的な診断マーカーを提案するとともに,その治療に結びつく薬理基盤の構築を究極的目的としている.まず,未病マーカーの構築については,昨年度までに腫瘍細胞の細胞膜表面に多く存在するムチン分子MUC1に対する抗体が生体の抗腫瘍活性を反映するマーカーとなる可能性を示唆してきた.本年度は,これを実験科学的に裏付けるために,本抗体による抗腫瘍活性の機序を追求した.抗MUC1抗体が細胞表面のMUC1と結合すると,MUC1はマクロピノサイトーシスにより細胞内へと取り込まれることは既に明らかにしていたが,MUC1の細胞内移行は同時にEGF受容体の取込みを誘発し,細胞表面のEGF受容体数を減少させることが分かった.すなわち,抗MUC1抗体は腫瘍細胞の増殖に重要なEGFシグナルを制御する内因性抗腫瘍因子として機能すると考えられた.一方,種々の漢方薬に含まれる甘草の主成分であるグリチルリチン(GL)の抗炎症作用についても,その機序を分子レベルで追求した.本年度の検討によりGLがINF-γ受容体下流のJAK-STAT依存性シグナルを著明に抑制し,INF-γによる種々の炎症性メディエータの発現を抑制することが分かり,本作用が少なくとも一部,GLを含む漢方方剤の作用機序として寄与している可能性が考えられた.これらの知見は,従来,不明であった東洋医学的な未病の病態と,これを治療する上での新たな戦略を示唆する重要な基礎データである.
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