2008 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルスによる神経傷害機序:HAMとエイズ脳症患者試料を用いた多角的解析
Project/Area Number |
19390243
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
出雲 周二 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30143811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 龍二 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (70336337)
古川 良尚 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00359978)
岡本 実佳 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (90336347)
有村 公良 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (20159510)
梅原 藤雄 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (20271140)
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Keywords | HTLV-1 / HIV-1 / HAM / TSP / エイズ脳症 / 発症病態 / 治療法 |
Research Abstract |
本研究は、ヒトレトロウイルスの慢性遷延性感染が引き起こす神経障害であるHAMとHIV脳症の発症病態を剖検例や動物モデルを用いて比較しながら解析することにより、それぞれの発症病態の共通するもの、特異的なものを明らかにし、発症機序の詳細を解明し、治療の標的となる病的機序を見いだし、病態に則した治療法を見いだすことを目的としている。 エイズ脳症の発症病態について、エイズ発症サルの炎症病変のない大脳皮質に星状膠細胞の障害とミクログリアの瀰漫性増勢を見いだしJ. Neuropathol. Exp. Neurol。に報告したが、ウィーン大学剖検例を用いてヒトにおいても同様の病態が生じているかを検討し、ヒトでもHIV脳炎とは独立して大脳皮質に星状膠細胞の障害とミクログリアの瀰漫性増勢が生じていることを明らかにし、同誌にて報告した。また、炎症性病態については感染細胞にIL-1βが発現し、炎症病巣の進展に関与していることを明らかにした。 一方、HAMの発症病態については、末梢血よりの感染リンパ球とそれをターゲットにする免疫細胞が組織に浸潤し、両者の炎症過程が周囲の組織に傷害を起すbystander傷害であることを想定しているが、剖検例脊髄組織を用いて検索し、HTLV-I感染CD4細胞とHTLV-I特異的CD8陽性細胞傷害性T細胞が浸潤し、細胞傷害性サイトカインの発現と周囲の細胞のアポトーシスが生じていることを炎症病巣で直接証明し、さらに血管周囲のCD4陽性T細胞とともに希突起膠細胞がアポトーシスを起こしていることを見いだした。また、HAM患者では制御性T細胞が減少してサイトメガロウイルスに対する免疫応答が亢進していること、HTLV-1特異的細胞傷害性T細胞の機能の障害が生じていることを明らかにし、それぞれ報告した。HIV脳炎と共通の病態が窺われ、病変形成にかかわる分子について明らかにしていく。
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