2008 Fiscal Year Annual Research Report
自己抗体とCLIP置換型Ii鎖ライブラリーを利用した再生不良性貧血自己抗原の同定
Project/Area Number |
19390260
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中尾 眞二 Kanazawa University, 医学系, 教授 (70217660)
|
Keywords | hnRNPK / 再生不良性貧血 / DRS-1 / moesin / 免疫抑制療法 / 免疫抑制療法 |
Research Abstract |
平成19年度の研究により、自己免疫性再生不良性貧血(再不貧)における新たな自己抗原候補としてheterogenous nuclear ribonucleoprotein (hnRNPK)を同定した。リコンビナントのhnRNPK蛋白を作製し、この蛋白に対する患者血清中の抗体の有無をELISA法により検討したところ、抗hnRNPK抗体は、PNH型血球陽性骨髄不全38例中13例(34.2%、再不貧10例、不応性貧血3例)、PNH型血球陰性骨髄不全患者53例中15例(30.6%、再不貧8例、不応性貧血7例)に検出された。抗hnRNPK抗体の存在は、これまでにわれわれが同定した抗モエシン抗体(r=.8318)、抗DRS-1抗体(r=0.7206)との間で有意な相関が認められた。抗hnRNPK抗体の有無を検索した49例(再不貧39例、不応性貧血10例)が抗胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリンによる免疫抑制療法を受けた。抗hnRNPK抗体が陽性であった22例は全例が治療に反応して改善したのに対し、抗hnRNPK抗体陰性の27例での奏効率は37%であり、両群の間で免疫抑制療法に対する反応性に有意な差がみられた(P<0.005)。抗モエシン抗体、抗DRS-1抗体、抗hnRNPK抗体のうち、どれか一つでも陽性であった患者群における免疫抑制療法の奏効率は95.6%であったが、いずれも陰性であった患者群の奏効率は38.5%であった。これらの結果から、自己免疫性の再不貧においては複数の自己抗原に対する免疫寛容の破綻が生じており、これらの抗原に対する自己抗体の検出は免疫病態を診断する上で有用と考えられた。 当初の研究計画では、新規に同定した自己抗原におけるT細胞レセプターリガンドを、CLIP置換型Ii鎖ライブラリーを用いて同定する予定であったが、同定した抗原蛋白が、造血幹細胞だけでなく多くの体細胞が発現しているhnRNPK蛋白であったため、当初の方針を変更し、PNH型血球陽性再不貧の姉妹発症例の骨髄中で抗原特異的な増殖を示すC8陽性T細胞クローンの対応抗原を、発現クローニング法を用いて同定しようとしている。現在T細胞のクローニングを終え、CD34陽性細胞からのcDNAライブラリーを作製中である。
|