2008 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林再生援助事業の持続と村落組織に関する研究ーフィリピンを事例に
Project/Area Number |
19401011
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
葉山 アツコ Kurume University, 経済学部, 准教授 (30421324)
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Keywords | フィリピン / 森林再生 / 村落組織 / 森林資源管理 / 社会資本 / 市場 / 国家 / 生計 |
Research Abstract |
フィリピンにおける森林再生援助事業の多くが持続的な森林管理に結びつかない原因として本研究は、外部によって作られた森林管理のための開発組織(森林組合)が根付くための仕組みが村落には存在していないという仮説をたてた。その仕組みが何であるかを明らかにするための調査をミンダナオ島北ダバオ州の山村でおこなってきた。山地における住民の経済活動は、たとえば市場への輸送コストの高さなど費用がたいへん高い。全世帯への悉皆調査によって彼らの土地利用選択や組織化を決定する要因が費用にあることが確認された。すなわち、彼らは経済合理性によって行動を決定する経済合理的な個々人なのである。これは、土地利用が費用の高さによって変わることで明らかである。たとえば、ここ近年、村人はバナナを積極的に植えているが、輸送トラックの通り道を外れた農地に住民はバナナを植えることを選択しない。輸送費用が高いからである。森林再生援助事業の持続という点において、1990年代末に大きな面積の人工林がつくられ、2003年より木材生産が開始された。しかし、木材価格に競争がなく、加えてその価格が他の土地利用と比べて低い場合、個々人が人工林を維持するインセンティブは存在しない。ほとんどの住民は人工林を伐採し、他の土地利用への転換を始めている。人工林を維持していく費用以上の便益を個々人が獲得できない以上、住民が人工林を維持すること、さらに森林管理のための組織を持つことの意味を見いだせないのは明らかである。森林組合などの開発組織が維持されていくかの仕組みが存在するかどうかは、存在させるための費用以上の便益を個々の住民が獲得できるかどうかにあるのではないか。一方で、移住民やその子供、孫世代によって構成される山村では、住民のほとんどが親戚、姻戚関係にある。そのような場において、住民が個々の利益を第一にする経済合理的存在と言い切れるのかどうか、このような山村の住民に固有の論理があるのかどうかをより詳細にみていかなければならない。
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Research Products
(1 results)