2007 Fiscal Year Annual Research Report
広域分布を示すアジア産アリ類の系統地理解析によるインド・レフュージア説の検証
Project/Area Number |
19405007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 正剛 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (90133777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 一夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (40224092)
辻 瑞樹 琉球大学, 農学部, 教授 (20222135)
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Keywords | 放浪種 / 系統地理 / アシナガキアリ / 生態系撹乱 / インド・レフュージア / チトクロームb遺伝 / マイクロサテライトDNA |
Research Abstract |
2OO7年8月20日〜9月1日と10月8日〜18日にインド、7月10日〜18日にセーシェル島、10月18日〜1月1日にクリスマス島においてアシナガキアリやツヤオオズアリなどの採集および生態調査を行うとともに、沖縄本島において広域分布種の群集生態学的研究を行った。その結果、これまでも報告があるように、多くの放浪種は開放環境で優占したが、クリスマス島のアシナガキアリは森林内でも多数生息するという例外的現象も確認された。また、アシナガキアリについて、今回の調査で採集された個体に加え、これまでに東南アジア、豪州、琉球列島など約20ヶ所から採集された個体を用いて地域個体群間の分子系統解析を行い、以下の結果を得た。1)チトクロームb遺伝子の塩基配列を個体群間で比較したところ、ツムギアリよりもかなり変異が少なく、種内分化の歴史が比較的浅いことを示唆した、2)従って、C01領域の変異も合わせて系統樹を作成したところ、インドの1個体群が最初に分岐し、「インドもしくはアフリカ起源」説が裏付けられた。3)インドネシアやオーストラリアの個体群からなる一群が形成され、地理的位置と系統的位置の関係が一部維持されてはいるものの、人為的運搬による撹乱も大きく進行していることが明らかとなった。4)アシナガキアリによる生物多様性の減少が進行しているセーシェル島とクリスマス島の個体群は特に近い系統関係にはなく、侵略的行動が系統に依存する可能性は低いと思われる。5)マイクロサテライトDNA分析の結果、日本の個体群は1つのグループを形成せず、日本へは複数回侵入したことが示唆された。
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