2009 Fiscal Year Annual Research Report
メコンデルタにおける海面上昇に伴う水稲生産の脆弱性評価
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19405040
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
横沢 正幸 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 大気環境研究領域, 上席研究員 (80354124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 昭彦 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 特別研究員 (10435589)
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Keywords | 塩水遡上 / 塩害 / 気候変動 / 国際研究者交流 / ベトナム |
Research Abstract |
本年度はモデルの改良と影響評価を実施した。また、評価対象地域をこれまでの沿岸部の塩水遡上地域から洪水常襲地域も含めたベトナム領メコンデルタ全域に拡大した。 1.モデルの改良 影響評価モデルは1河川水路水理、2水田水収支、3作付暦、4イネ生育を評価するモジュールから構成されている。本年度は作付暦推定モデルを改良し、播種日の決定を日々の水田環境条件だけでなく過去の環境条件および栽培履歴も考慮したアルゴリズムを用いて行うようにした。その結果、年々の環境変動に伴う作付暦の変動が広域でもよく再現できるようになり、2002-2006年における出穂日のモデル推定値と衛星画像判別値との差(RMSE)はデルタ上流域(3地点)、中流部(3地点)、沿岸域(4地点)においてそれぞれ、17.6,11.2,13.0日となった。 2.水資源変動影響評価 GCMでは海面上昇量の全球平均値は2090年代で+32.7cm(MIROC3.2hires A1B)と予測されているが地域間差は大きく、同年代のメコンデルタ沿岸沖では+4.5cmとなる。海面上昇は塩水遡上に影響するものの、予測されている海面上昇量の範囲においてはその影響は小さく、むしろメコン河の流量変動が及ぼす影響が遙かに大きいことが分かった。海面上昇量を予測よりも大きく52cmと仮定したシミュレーションにおいてもこの傾向は変わらなかった。次に過去および将来気候シナリオ(MIROC3.2hires A1B)をモデルに適用し、作付暦、収穫面積および収量の変化をシミュレートしたところ、洪水年と少雨(塩水遡上)年にはそれぞれ上流部と沿岸部の収穫可能面積が大きく減少したが、同時にその他の地域では作付可能面積が増加する相反関係が見られ、その結果、空間分布は変動するもののデルタ全体の総収穫面積の減少は緩和されることが分かった。しかしながら一方で、気温上昇による収量への影響は敏感であり、その結果、2020年代後半におけるベトナム・メコンデルタのコメ生産量を集計したところ現在よりも約11%低下する可能性が示された。
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