2009 Fiscal Year Annual Research Report
世界無形遺産グルジア伝統ポリフォニーの音響構造分析と感性評価
Project/Area Number |
19500184
|
Research Institution | Foundation for Advancement of International Science |
Principal Investigator |
河合 徳枝 Foundation for Advancement of International Science, 研究開発部, 主任研究員 (50261128)
|
Keywords | 超高周波成分 / ゆらぎ構造 / ポリフォニー / グルジア / 合唱 / 感性脳 |
Research Abstract |
グルジア共和国におそらく千年を超えて伝承されてきた高度なポリフォニーは、人類が築きあげてきた芸術文化の至宝のひとつであり、西欧のポリフォニーの源流といわれる。ユネスコにより『人類の口承・無形遺産の傑作』第一号の指定をうけたグルジアのポリフォニーは、人類の感性脳を強力かつ高度に誘起し、人類普遍の魅力をもつ。この研究では、グルジアのポリフォニーに特異的にみられる周波数・ゆらぎ・ピッチ(音高)などの音響構造を解明し、それらが人間の脳における感性反応にどのように作用しているかを検討することを目的とする。 20年度は、主としてグルジア伝統ポリフォニー独特の音律の分析を行った。典型的な楽曲の各声部を分離・抽出してピッチ解析を行った結果、グルジア伝統ポリフォニーの音律は、各音が12平均律との間に数~数十セントの差をもち、純正律に比較的近い値をとりつつも、半音差の箇所では純正律のピッチと大きく異なることが見出された。さらに単に12平均律と異なるだけではなく、他の声部との相対的な関係によってその音高が随時調整される仕組の存在も示唆された。 このグルジア伝統ポリフォニー独特の音律が人間に与える感性的な影響を調べるために、オリジナル曲を十二平均律に合わせてピッチ変換した曲を作成してオリジナル曲とともに被験者に聴取させ、基幹脳活性指標を計測するとともに、主観的印象評価実験を行った。その結果、グルジア伝統ポリフォニーの方が十二平均律にピッチ変換したポリフォニーよりも、基幹脳活性と相関の高い脳波ポテンシャルを増大させること、心理的な好感度が高いことが見出された。 このように、グルジア伝統ポリフォニーの音律上の特徴は、これまでに見いだした非定常的な超高周波成分の豊富な含有と並んで、これを特徴付ける音響構造と考えられる。
|
Research Products
(1 results)