2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500185
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
関 陽子 National Research Institute of Police Science, 法科学第四部, 部付主任研究官 (10356157)
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Keywords | 感性情報学 / アルゴリズム / 認知科学 / 印影 / 鑑定 / 法科学 |
Research Abstract |
平成21年度は、印影鑑定と同様、鑑定人の知識や経験が鑑定結果を導くプロセスに大きな影響を与えるといわれる筆跡鑑定における鑑定人の鑑定手法を分析し、印影鑑定への応用を試みた。筆跡鑑定では、筆跡の個人特徴のうち形態の特徴が最も重視されると考え、異なる筆者6人が繰り返し6回ずつ書いた「く」「つ」を筆者ごとに分類する試行を、再構成筆跡(字種ごとに位置計測箇所を定め、筆跡ごとに計測点のxy座標を測定し、測定点を結んで筆跡を再構成したもの)とオリジナルの筆跡を用いて、筆者ごとに分類する試行を行い、結果の正答率を比較した。再構成筆跡の分類は、クラスター分析および鑑定人1名の目視(パターン分類)で行った。オリジナル筆跡の分類は、パターン分類と同じ鑑定人1名が分類を行った。鑑定人は、パターン分類では、パターンの分類を行うという指示で分類を行った。オリジナル筆跡の分類試行は、パターン分類の1ヵ月後に行い、鑑定人には筆跡の分類を行うと指示した。分類結果の正答率を文字ごとにクラスター分析、パターン分類、オリジナル筆跡の分類で比較した結果、クラスター分析とパターン分析では正答率の平均は約40%であったが、オリジナル筆跡分類では、平均正答率は約88%であった。鑑定人に分類の手がかりについて聴取した結果、形態以外に色材の階調から書字運動情報を取得し、筆跡特徴として分類に利用していることがわかった。この結果から、印影鑑定でも階調変化を鑑定に利用していると考え、真正印影、押印方法が真正と同じ偽造印影、押印方法が異なる偽造印影で階調分布を比較した。その結果、押印方法が異なる偽造印影では階調分布が真正印影とは相違していた。以上より、階調分布は識別の指標として有効であると考えられた。
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