2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 正人 The University of Tokyo, 大学院・教育学研究科, 教授 (10134248)
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Keywords | 特定性 / 習慣 / スキル / 姿勢 / 環境のレイアウト / アフォーダンス / 行為の柔軟性 / ダイナミクス |
Research Abstract |
人は生活の中で様々なモノに出会いそれを扱う。長くモノと関わるなかで人の身体は、モノの性質を深く知る動きとなる。ここではこのように成立した身体の動きを「習慣」とよぶ。習慣は特徴あるモノの改変の仕方であり、短期あるいは長期の動きの反復であるが、そこにはいつも同じことが繰り返される恒常的、持続的な側面と、状況に対応して毎回適応的なモノの使用と動きが産み出される柔軟性の側面が存在する。本研究はこの習慣の特徴を「時間構造」の解明によって明らかにすることを目的とする。 習慣は日、週、月、年単位、さらには一生にわたる動的変化である。この動的現象を理解するためには、短期から長期までのさまざまな時間スケールの相互作用の仕組み、すなわち多重時間ダイナミクス構造を理解することが必要である。本研究では習慣的行為をVICONモーションキャプチャーシステムによって3次元運動計測し、新しい非線形時系列解析手法を用いて、習慣的な行為がもつ時間構造を明らかにしようと試みる。 平成19年度には,「表現する習慣」として,画面と表現対象を交互に見ながらデッサンをする表現習慣の視覚と身体の動きを検討し,その「時間構造」の特徴を抽出した(Nonaka, Nishizaki & Sasaki, 2007)。二人の画家によるデッサン行為における頭部、体幹上部、手の運動をVICONによって計測し、得られた各部位の時系列速度信号をRQAによって解析したところ、二人の画家において、体幹上部の運動の時間変化は、頭部および手の運動の時間変化よりもより非決定論的であり、また頭部と手の運動協調は他の部位間のものに比べて高い決定論性をもつという共通した特徴が見られた。この結果は,視覚的な探索と画面に痕跡をのこす操作が一つの身体において共起する背景には,体幹の姿勢調整の非決定論的な時間構造が存在し,描画行為における頭部と手の運動協調の生成において重要な役割を果たしていることを示唆するものと考えられた。
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Research Products
(2 results)