2008 Fiscal Year Annual Research Report
延髄内のデュアルリズムジェネレーターによる呼吸の基本周期決定の神経機構
Project/Area Number |
19500277
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
鬼丸 洋 Showa University, 医学部, 准教授 (30177258)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 呼吸リズム形成 / 延髄 / 中枢化学受容 |
Research Abstract |
延髄呼吸中枢には,少なくとも2種類の呼吸性リズムジェネレーターが存在する:プレベッチンガーコンプレックス(PBC)と最近申請者らが発見した傍顔面呼吸ニューロングループ(pFRG)である.PBCおよびpFRGは,ある条件下ではそれぞれ独立にリズムを形成しうるが,延髄全体としては,これらのニューロングループ間での相互作用により呼吸の基本リズムが形成されると考えられている.本研究の目的は,これらのリズムジェネレーターが実際にどのような条件下で,どのような相互作用を行うことで,呼吸の基本リズムを決定するのかを明らかにすることにある. すでに我々は延髄最吻側レベルの腹外側部(顔面神経核と腹側表面の間の狭い領域)に、Pre-Iニューロンが密集して存在することを明らかにした。この延髄最吻側部pFRG-Pre-Iニューロンは、呼吸の基本周期を決定する機構において、pFRG全体の活動レベルを増強する役割を持つことを示唆する結果を得ていた。平成20年度の研究では、これらのpFRG-Pre-Iニューロンが、TTX存在下で、外液のCO2濃度を上げた時に脱分極の膜電位応答(つまり内因性CO2反応性)を示すことを明らかにした。さらに、これらのニューロンは転写因子であるPhox2b遺伝子を発現していることを、免疫組織化学的に確認した。Phox2b遺伝子は、延髄中枢化学受容器細胞が特異的に発現する遺伝子として最近注目されている。これらの結果は、pFRG-Pre-Iニューロンは、少なくとも生後直後では、呼吸リズムジェネレーターとして働くと同時に、中枢化学受容器としても重要な機能を有していること、このために、生後の生存に不可欠な役割を果たしていることを示唆する。これまで、pFRGの神経生理学的性質はPBCのそれに比べ、不明の点が多いとされてきたが、今回の結果はこうした疑問に答える重要な発見である。
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