2007 Fiscal Year Annual Research Report
ALS2活性化因子同定によるALS2の生理的機能と運動ニューロン変性機構の解明
Project/Area Number |
19500330
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
國田 竜太 Tokai University, 医学部, 奨励研究員 (90449124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 伸二 東海大学, 医学部, 准教授 (60281375)
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Keywords | 運動ニューロン疾患 / ALS2 / 生体膜輸送 / マクロピノサイトーシス / Rab5 / Rac1 / 筋委縮性側索硬化症 / エフェクター |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの選択的変性を特徴とする神経難病である。治療法の確立には、疾患発症のメカニズム解明は重要である。そこで私は、家族性劣性ALSの原因遺伝子産物(ALS2)の生理的機能の解明を通して神経変性機構の解明を目指し研究を行っている。すでに私達は、ALS2が低分子量G-タンパク質Rab5の特異的活性化因子(GEF)・であり、細胞内で膜輸送過程を制御することを明らかにしている。本年度の研究で私は、Rab5活性化因子であるALS2が、著名なG-タンパク質であるRac1に直接活性化されていることを明らかにした。重要G-タンパク質間のクロストークの存在が明らかになり興味深い。さらにALS2が、Rac1により細胞質から局在を変えて関わるようになる膜輸送過程は、マクロピノサイトーシスと呼ばれるエンドサイトーシスの一機構であった。つまり、運動ニューロンの生存や機能の維持にマクロピノサイトーシスを介したシグナル伝達機構が必須である可能性がある。しかしながら私達以外の研究グループは、ALS2は、Rac1のエフェクターではなく、その活性化因子であるとの我々の報告と矛盾する論文を報告している。最近、アミノ末端に1アミノ酸置換変異を有する2種の変異ALS2が、家族性の神経変性疾患の原因であることが報告された。この変異部位は、ALS2の機能部位ではなく、その機能喪失メカニズムに興味が持たれる。私は、この1アミノ酸置換を伴う変異ALS2(ALS2_C157Y, ALS2_G540E)が、Rac1に対する反応性を失っているとの仮説を立て、その実証を行った。2種の変異ALS2と野生型ALS2を、恒常的活性化型Rac1と共にHeLa細胞に発現させた結果、野生型ALS2は見事にマクロピノソーム局在を示したが、これらの変異ALS2は、全くマクロピノソームに局在しなかった。このことは、この変異ALS2が、1アミノ酸変異によりRac1のエフェクターとしての機能を失っていることを意味する。すなわち、ALS2が通常Rac1のエフェクターであるという我々の立場を強く支持する結果であった。
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