2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト中脳黒質に存在するニューロメラニンの構造とその生成過程の解明
Project/Area Number |
19500332
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
若松 一雅 Fujita Health University, 医療科学部, 教授 (80131259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 祥輔 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (70121431)
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Keywords | ニューロメラニン / 化学分析 / パーキンソン病 / ドーパミンメラニン / システイニルドーパミンメラニン / 黒質 / 青斑核 / カテコールアミン作動性ニューロン |
Research Abstract |
褐色で不溶性のメラニン様色素(ニューロメラニン、NM)は、中脳のsubstantia nigra(黒質)およびlocus coeruleus(青斑核)のカテコールアミン作動性ニューロンに存在している。近年この色素がパーキンソン病の病因に重要な役割をしていると関連づけられているが、詳細は不明である。しかしながら、皮膚のメラニンとは対照的にその構造や機能は単離の困難さや適切な生化学的モデル化合物がないため不明な点が多い。NMの構造については、先に我々はドーパミン(DA)とシステイン(Cys)が約4:1で酸化重合して生成したPMの構造単位であるベンゾチアジンユニットを持つ部分とDAの酸化重合で得られたEMの構造部分からなることを報告した(J. Neurochem.,86,1015-1023,2003)。最近、我々は脳内putamen(被殼)、premotor cortex(前運動野皮質)、cerebellum(小脳)などに非カテコールアミン作動性ニューロンにおいて新しいNM様色素が存在することを発見した(L. Zeccaら、Proc. Natl、Acad. Sci.,105,17567-17572,2008)。この色素は脳内に低濃度ではあるが普遍的に存在していた。重要なことに、この色素は、黒質や青斑核に存在するNMと違って、DA由来ではなく、ドーパ由来であることが化学分解法とHPLC分析により確認された。この色素は、細胞毒性のあるキノン体を除去するためシステイニルカテコール体に変換することにより神経系を保護していると推測される。また脳内の毒性金属(鉄、亜鉛、アルミニウム、クロムなど)をキレートし、除去することも確認された。したがって、NMをはじめ被殼、前運動野皮質、小脳などに存在する色素が、aging中に有毒なキノン体や毒性金属を排除する一助になっているものと推測される。さらにまた、我々は、NMの塩酸水解後のHPLC分析により、パーキンソン病に関連する神経内毒素として知られているジヒドロベンゾチアジン(DHBT-1)を初めて見出した(投稿準備中)。このことは、NMが毒性物質であるDHBT-1を捕捉し、神経系を保護している可能性を示唆していた。
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Research Products
(21 results)