2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世為政者の武芸実践と武芸政策に関する文献学的研究
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19500515
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Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
菊本 智之 浜松大学, 健康プロデュース学部・心身マネジメント学科, 教授 (70267847)
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Keywords | 近世武芸 / 為政者 / 将軍 / 武芸実践 / 武芸政策 / 武芸思想 |
Research Abstract |
近世の武芸研究を進める場合、達人・名人の個人的な武芸観や思想は、関係流派にあっては直接影響があったと考えられるが、当時の武士階級や武芸界全体にわたって多大な影響があったとは一概にいえない。むしろ、当時の武士階級に最も影響力をもった権力者が、どのような武芸嗜好や思想を持ち、武芸界や武士階級にどのような影響や施策を行ったのか明らかにしていくことが必要であると考えている。21年度までは、江戸の三大改革時の権力者に着目し研究を進めてきたが、今年度は将軍の武芸実践の様子と三大改革以外の権力者にも目を向け研究を進めた。その結果、大きな実戦を経験している家康、秀忠には、戦場の技法につながる武芸の視点が見られるが、生まれながらに将軍家の跡取りとして養育された家光以降には、柳生新陰流に代表される将軍学としての武芸実践の位置づけが見て取れた。しかし、7代家継は6歳9ヶ月で死去し、家康・秀忠・家光と続いた徳川宗家の血統が絶えており、6代家宣を最後に将軍家は柳生家に誓紙を入れていない。吉宗以降、幕末までの将軍は全て吉宗の直系か、吉宗が立てた御三卿一橋家の人間である。また、御三卿筆頭田安家出身の松平定信(吉宗の孫「寛政の改革」)を初めとする久松松平家出身の人物、真田幸貫(定信の次男)が「天保の改革」の老中、板倉勝静(定信の孫)が幕末の混乱期に最後の老中筆頭というように、幕政の重要な局面において手腕を発揮している。第43回日本武道学会では、「『鶯宿雑記』所収「御柔道心得」に関する一考察」と題し、定信を含め5代の久松松平家藩主に70年近く仕えた駒井鶯宿の武芸に関する著述を基に、久松松平家で培われた武芸思想と環境が、久松松平家出身の幕閣を生み育て、後に政局、政策決定や当時の武士階級や惹いては武芸界にも多くの影響を与えたことを明らかにし発表した。
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Research Products
(1 results)