2008 Fiscal Year Annual Research Report
重度な知的障害者の水泳指導研究-シンクロ的泳ぎの導入による遠泳学習への効果-
Project/Area Number |
19500536
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
原 通範 Wakayama University, 教育学部, 教授 (00108002)
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Keywords | 比較対象者 / 潜ってパッ / 随行するリーダー / 軽い身体補助 / 発達の最近接領域 / 浮き身 / 息つぎ / 環境的要因 |
Research Abstract |
今年度,当初の研究計画との変更を余儀なくされた。主な理由は,対象者A(現在26歳男性:重度な知的障害者)と同等な発達状態の障害者Bが,障害児学校高等部卒業後,家庭の事情等も含め,遠泳に参加できなくなったことで,Aの泳ぎ行動の発達経過を対比する対象者が実質的にいなくなった。一方Cは,Aと対比する意味が全くないほどに,プールにおいても海においても泳力レベルが違いすぎるので比較研究の意味をなさないことが昨年1年間の研究を通じて明らかとなった。そこで今年度は,Cに比べ,プールのシンクロ泳ぎにおいては優秀だが,海の遠泳では波や風,深さ等により昨年やっと一周だけ自力で泳ぎを獲得した(約200mほどは泳いだ)Dを比較対象者として取り上げた。 (1)Aはシンクロにおいて,5月のシンクロフェスティバルに比べて,その後だんだんとプールの中で,顔をつけることやみんなと「潜ってパッ(手をつないで息つぎ)」をすること,そして途中顔をつけ浮くこと(Aは浮く動作までやれないことが多いが)等が上手になっていく(やるようになっていく)。 (2)遠泳時,2007年の夏までは,彼においては往復300mくらいのコースを,沖までの道中では概ね泳がず,浮き輪に捕まったり,少し潜ってみたりを繰り返しながら行き,後半になって,回りから(私たちの側から)促されて何とか泳ぐということを数年繰り返してきたが,2008年夏は,前半から随行するリーダーに軽い身体補助(顔をつけてグライド姿勢で浮き身をとる助け)を借りて浮き身をとること,そして息つぎをしてまた同じことを繰り返すことなどをしながら,約200mくらいの距離を概ね泳ぎ通すことができた。この軽い補助が発達の最近接領域(ヴィゴツキー)として働いたようだ。 (3)Dは,今年の方が少し波が大きく風も向かい風だったので,昨年よりも少し泳力が落ちたかのような泳ぎだった。このように,環境的要因が通常泳力の発揮に作用する。
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