Research Abstract |
本研究は,堅ろう性が高い含銅反応染料または含銅直接染料と銅塩で綿布を媒染し,(1)実用性の高い消臭機能布の調製法の検討と,(2)ガスクロマトグラフ(GC)法を用いたエタンチオール(ET)の消臭機構の解明を目的とする.今年度は直接染料を用いて研究を進めた. (1)染料濃度0.1~10%owfの直接染料5種,Direct Blue 1, Blue 15, Blue 86(含銅),Violet 1, Red 2と硫酸銅を用い,シルケット加工ブロード綿布を染色,後媒染し,ETに対する消臭性を検討した.染料の種類により消臭性は異なり,Blue 1染色布では染料濃度の増加に伴い含銅量が増し,消臭性が高くなった.すべての染料において,濃度0.5%owf以下で染色した綿布の消臭性は低かった.消臭機能発現には,染料の銅への配位が不可欠であると考えられる.消臭性の高いBlue 1は,ジアニシジン系直接染料で,ナフタレン環の水酸基とともに,アゾ基,メトキシ基で囲まれた空間がある.銅塩媒染によりこの部分に銅が結合して錯塩化しやすく,染料の増加に伴い銅の吸着が増し,消臭性が高くなったと考えられる. (2)含銅直接染料Direct Blue 200と硫酸銅を用い,ブロード綿布を先媒染,染色,後媒染した.得られた先媒染試料布(pre),染色試料布(dye),染色+後媒染試料布(dye+aft)を用いて,ETに対する消臭機構を検討した.各試料布,空気,ETを入れたテドラーバッグ内の一定量の空気を抜き取り,GCに注入し,クロマトグラムを求めた.消臭過程でETとジエチルジスルフィドのピークが検出され,分解と吸着が起こっていると考えた.pre型の銅は触媒型(分解)と吸着型であり,aft型の銅は触媒型のみであると推論した.染料濃度が高くなると後媒染により含銅量が増し,消臭には分解のみが関与し,すべてのETが分解することがわかった.
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