2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19500878
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
吉田 敏弘 Kokugakuin University, 文学部, 教授 (90144310)
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Keywords | 文化的景観 / 景観保全 / 農村景観 / 骨寺村 / 世界文化遺産 / 伝統的生業 / 段畑 / 文化景観のオーセンティシティ |
Research Abstract |
2005年度以来、文化財保護法や景観法に基づく文化的景観の保全事業が開始された。もとより保全には多様な意義や目的が想定されるが、実際に保全の価値ある文化的景観を選定するためには、その価値評価のための学術的な方法や基準の確立が急務である。本研究は、景観研究の蓄積をもつ地理学に立脚し、国際的・学際的な観点を交え、文化的景観の価値評価の方法の構築を試みた。ICOMOSのガイドラインに即して文化的景観のAuthenticity(現景観がどれほど忠実に伝統的な景観要素を保持しているか)を評価するためには、当該地域における近現代の景観変遷の中で、変化しなかった景観要素を抽出し、その社会・文化的機能が伝統的な形態を継承しているかどうかを確認する必要がある。本研究では、「一関本寺の農村景観」と「宇和島遊子の段畑」を主たる事例として、当該地における現在の景観の価値評価を試行し、次のような5つのステップから成る基礎調査が有効であると判断した。(1)明治初期地籍図などに記録された伝統的景観の特質の解明、(2)伝統的景観(地籍図)と現景観との精密な比較、(3)近代以降の景観変化の過程とメカニズムの解明(土地利用パターンや作物、地割など)、(4)伝統的な景観要素残存の背景を地域の社会・経済・文化的側面から考察、(5)現景観の活用可能性の考察と保全の方向性の提示。なお、上記の作業をヴィジュアルに活用するため、GISの導入と時系列統合マップの構築が有効であることも確認した。いずれの事例においても、近現代における景観変容は深刻であるが、本寺では用水路網が伝統的形態を保持しており、中世以来継続する水田開発の方向性を指示するものと評価できる。また、遊子では、明治期の段畑整形、石垣構築が現景観の起点となるが、それは伝統的な急傾斜地農業の一つの極相としての文化的景観であると評価できる。
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Research Products
(6 results)