2007 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化及び河川工作物が世界自然遺産・知床半島の淡水魚類に及ぼす影響評価
Project/Area Number |
19510017
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
谷口 義則 Meijo University, 理工学部, 准教授 (30316145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河口 洋一 九州大学, 工学研究院, 助教 (20391617)
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Keywords | 地球温暖化 / 淡水魚類群集 / 小規模河川内構造物 / 世界自然遺産 / 知床 / 生態学 |
Research Abstract |
知床半島先端部分の河川群を除く37河川に自動水温記録計を設置し,東西両岸の10河川においてオショロコマの生息密度の定量化調査を実施した.加えて,東西両岸の5河川に自動水位記録計を設置した.水温計の計測の結果,半島西岸の金山川,ヌカマップ川,オンネベツ川をはじめとする複数の河川において平成11-12年度に比べて盛夏期に著しい水温上昇が起こっていることが認められた.オショロコマは水温20度を越えると温度ストレスにより採餌しない.これらの河川では20度を超える日数が数多く記録され,著しい夏季の水温上昇が認められた.オショロコマは水温20度を越えると温度ストレスにより採餌しない.これらの河川では20度を超える日数が数多く記録され,著しい夏季の水温上昇が認められなかった河川群にくらべて,オショロコマの生息密度が低く,水域によっては絶滅状態に至っていた.また,幼魚や高齢魚個体が少ないなど新規年級群の加入不足や生残率の低下が顕著であった.今年度は,水位計データの回収が不十分であったため,河川の流量変動等の流況に関するデータ解析はできなかった. 以上の結果より,知床半島の主に西岸河川においてはオショロコマの健全な個体群を維持するための温度生息環境が著しく損なわれている可能性が高いものと考えられる.今年度認められた水温上昇が地球規模の気候変動に起因するものかどうかは断定できない.一方,砂防・治山ダムの建設時に行われた河畔林の伐採,河川沿いの工事道路建設,さらにダム建設後の下流部の水深浅化等の環境改変がこれらの河川において水温の上昇を引き起こしている可能性は極めて高い.このような環境悪化に対して,地球温暖化が拍車をかけている可能性もある.今後,他の河川においてもモニタリングを継続していく一方で,温度生息域指標となる河川を複数設定し,これらの水域では縦断方向に(流程上で)温度生息環境調査及びオショロコマの生態に関する調査を行っていく必要がある.
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Research Products
(2 results)