2008 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的試料を用いた1960年代の太平洋における核実験起源炭素14の復元
Project/Area Number |
19510025
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
熊本 雄一郎 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境観測研究センター, 技術研究主任 (70359157)
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Keywords | 海洋科学 / 地球変動予測 / 海水循環 |
Research Abstract |
本研究課題は、1968/69年に中部太平洋で採取された歴史的試料中の炭素14濃度を測定することにより、1968/69年当時の当該海域における核実験起源炭素14蓄積量を明らかにすること、及びこの歴史的試料の炭素14濃度から計算される核実験起源炭素14量に1970年代のデータを加えて、1960年代から1970年代にかけての中部太平洋における核実験起源炭素14蓄積量の変動を解明することを目的とした。平成20年度は、昨年度に引き続き2観測点(観測点B及びC)の実試料の前処理、加速器質量分析による炭素14同位体比の測定を実施した。昨年度測定した、南太平洋亜寒帯海域における観測点Aでは、1968年から1973年の5年間に核実験起源炭素14が海洋表面から水深数百mまで広がっている様子が明らかになった。今回測定した2観測点は太平洋熱帯海域に位置する。この2点について1968/69年と1973年のGEOSECSのデータを比較したところ、観測Aと同様に核実験起源炭素14が水深500m以浅で増加していたことがわかった。一方で、水深1500m以深における炭素14を比較したところ、1968/69年のデータは1973年のそれと比して系統的に濃度が高かった。1970年代以前に水深1500m以深に核実験起源炭素14が到達していることは考えにくく、1968/69年の炭素14データはサンプル(炭酸ストロンチウム)の保管中に高濃度の大気中炭素14に汚染されていたと考えられる。また、このことは炭素14と同時に測定した炭素13の測定結果からも支持されている。したがって、1968/69年から1973年の間の核実験起源炭素14の増加を、定量的に議論することには限界があると考えられる。しかしながら、本研究で得られた炭素14の経年変化に関わる知見、試料前処理法の検討結果等は今後の研究進展に資することが期待される。
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