Research Abstract |
最近,国の内外4箇所で起きた崩壊起源の土石流あるいは岩屑なだれの現地調査から,本川の谷底幅が小さい場合には,崩土は本川を一旦は堰き止めることを,しかし,堰き止めが起きても,本川の流量が大きい場合には,崩土が容易に流失して地すべりダムが形成され難いことを明らかにした.いっぽう,地すべりダムが決壊しないで長期間存続する条件を抽出するため,国内13箇所の事例について地形解析を行い,一部については現地調査を実施した結果,地すべりダムが決壊を免れると,ダム湖は堆積物で埋積されてゆくが,このような地形には,河床縦断形や谷幅に異常が認められること,従ってこのような異常の検出が地すべりダムの検出に有効であることを明らかにした.地すべりダムが今後どこで起きるかを予測するには,崩壊が何処で,どのような規模で起きうるかを判定する必要がある.そのような判定は,10mDEMと空中写真を用いた地形解析結果,すなわち,斜面上の地点に対する集水面積の大きさと,当該地点斜面の上部に遷急線が,また下部に急傾斜部があることを必要条件として,可能となることを明らかにした.これらのデータから崩壊範囲が推定され,崩壊土量の予測が可能となる.抽出される斜面の崩壊を規制する条件として重要となるのは斜面内部の地下水とこれを規制する地質構造である.宮崎県下で起きた崩壊地の湧水を分析して,カルシュウムなど溶存成分の濃度が周辺の湧水に比べて異常に高いことを明らかにしたが,これは斜面内部に断層が存在していること,断層由来の粘土層形成が寄与していることを,現地調査から明らかにした.すなわち,湧水の水質監視が崩壊の潜在危険度評価の有力な一手段となることを示すものである.
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