Research Abstract |
地すべりダムの去就を検討するため,先史時代に起きた崩壊によるとみられる事例の検出を進めた.その結果,流路幅,谷底幅,河道の転向,河床縦断面形状,河道の屈曲度など,河道の局所的な地形に特異な状態が生じていることを明らかにした.また,これら地形異常の条件から,地すべりダムによる河川閉塞の程度を推定することは容易でないこと,さらに,地すべりダムの去就は崩土の特性だけでなく,河川地形の規制を強く受けていることを明らかにした.いっぽう,現世の崩壊および地すべりダムについては,二事例について研究を進めた.2008年岩手宮城内陸地震により大小多数の崩壊や土石流が起きて被害がもたらされた.河道沿いで起きた規模の大きな崩壊は,地すべりダムとなり河道を閉塞したので,それらの地形の現地調査とデータ解析を実施した.また,崩土が長距離移動する過程で流動性を増し,土石流に変化して災害を引き起こした事例について現地調査を行ってその特徴を明かにした.地すべりダム形成直後の湛水の進行や崩土の去就を明らかにするのは必ずしも容易でないが,2008年岩手宮城内陸地震で荒砥沢ダム付近において起きた崩土移動と堰止め湖出現過程の特性が,これらの問題解決に役立つことを示した.いっぽう,2005年14号台風豪雨により宮崎県別府田野川流域で起きた規模の大きな崩壊地の精査をさらに進めた結果,崩壊源となった地山に長大な粘土層の存在を見出した.粘土層が豪雨時に地山中で地下ダムの役割を果たして規模の大きな崩壊の発生を促したこと,また,このような条件が崩土中の含水量を著しく上昇させたことが,本川での地すべりダム非形成につながったことを明らかにした.
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