Research Abstract |
地すべりダムによって形成される谷地形の特徴を明らかにした.この特徴をもとに抽出した31の地すべりダムについて検討したところ,付加体地域に比べて,第三紀層地域では,地すべりダムはより形成され易く,持続性が高いことを明らかにした.河床勾配が小さく,川幅が広めのため,ダム堤体が長めとなり水位の上昇速度が抑制される結果,破堤に至り難いからである.また崩壊岩体の硬軟よりも,崩土の運動様式と河系形状がダム安定性をより強く規制していることを明らかにした.また,運動様式が土石流の場合には短期降雨と長期降雨の組み合わせが土石流の規模や流動性を規制すること,したがって,このメカニズムが地すべりダムの形成と決壊の条件となることを明らかにした. 一方,2008年岩手宮城内陸地震で起きた,規模が大きな地すべりダムの帰趨を検討したところ,崩積土塊両側に新たに形成される谷地形の発達と,新たな河道部に見られる増比高と増傾斜が特徴的である.この特徴は地すべりダムの安定性を規制すると共に,堤体の持続性を規制することを明らかにした. 2005年14号台風豪雨は宮崎県下に規模が大きな崩壊を引き起こし,地すべりダムを形成した.それらダム形成物質が砂岩/頁岩風化物であるという地質規制が強く働いていることを明らかにした.すなわち風化物生成速度がこのような規模の大きな崩壊の発生頻度を規制していることになる.崩壊地で採取した泥岩と砂岩の風化速度を実験的に検討したところ,頁岩に比べ,泥岩では乾湿風化の速度10倍程度大きく,さらに塩類風化が加わる場合があることを明らかにした.
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