2010 Fiscal Year Annual Research Report
韓国軍のベトナム戦争参戦の記憶をめぐる韓越比較研究
Project/Area Number |
19510247
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 正子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20327993)
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Keywords | ベトナム戦争 / 韓国軍 / 戦争の記憶 / 和解 / NGO / 公定記憶 |
Research Abstract |
8月末~9月初に韓国に渡航して、ベトナム戦争に参戦した韓国兵で虐殺について証言している人と、逆に派兵の正当性を主張している退役軍人会を訪問してインタビューを行った。さらに当時ベトナム参戦に備えて兵士を訓練していた北朝鮮国境に近い江原道に、2008年にオープンした「ベトナム参戦勇士出会いの場」(派兵記念館)を訪問し、ベトナム戦争参戦がどのように顕彰されているかを調査した。その結果、ベトナム戦争参戦をめぐる評価に関して二分されている韓国世論の対立が、保守政権の下で先鋭化している状況が明らかになった。またそのような現状をベトナム国内に知らせようとする韓国NGOの活動についても聞き取りを行ったが、歴史に真摯に向き合おうとするそのような活動は、表面的に良好な外交関係を誇示しようとする両国政府から、圧力を受けている現状も明らかになった。ベトナム側では、米軍の大規模な基地のあった中部ダナン市周辺のクアンガイ省を3月初に訪問した。韓国軍は当地で米軍との合同作戦などを展開しており、その過程で複数の虐殺事件が発生しているので、虐殺の生き残りの人々を訪問してインタビューを継続した。しかし今回は、上記の韓国NGOの活動が理由だと推測されるが、ベトナム側がこの問題が韓国政府との関係に影響を与えることを警戒していることが感じられ、行く先々で「歴史研究は現在の両国の友好関係を増進するためのものでないといけない」と説教され、また昨年度までの他省での調査では可能であった虐殺の生き残りの方々の自宅を直接訪問してインタビューすることも認められず、村役場での集団でのインタビューとなったので、以前ほど「本音」の話は聞けず、ほとんどの人がベトナム国家の「公定史観」を口にしていたのが残念だった。ベトナム国家が国民を末端まで統治する力はかなり強力なものであることを再確認することとなった。
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Research Products
(3 results)