2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19510251
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深尾 葉子 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (20193815)
|
Keywords | 黄土高原 / 脆弱性 / レジリアンス / 耕作放棄 / 結皮 / ダスト舞い上がり |
Research Abstract |
本科研では、毎年一度現地調査を行い、また現地の協力者とともに、社会的コンテキストに即した緑化プロジェクトを推進し、土壌表面への人間による関与の変化がもたらす地表面の変化の推移を参与的に観察した。現地での参与実験は、徐々に人々の意識に訴えかける内容となっており、現地での報道なども頻繁に行われるようになっている。 研究プロジェクトとしては、我々が現地で開催した会議の内容や報道、また、現地協力者の活動をまとめた書籍や資料など、散逸してしまいがちな資料を集めて、日本語に翻訳し、本研究プロジェクトの現地調査報告とともに、一冊の本にまとめ、21年度東京大学東洋文化研究所紀要別冊として、出版の予定である。 中国では近年、黄土高原における浸食を引き起こしているのは、7割が自然で3割が人為的要因によるものである、という見解が優勢となり、これまでの中国の歴史地理学者の多年に亘る研究成果を覆す勢いとなっている。これに対し本研究は、ダスト舞い上がりや土壌崩落といった現象は、典型的な「非線型」現象であり、その原因を、人為と自然に二分し、割合を定めるといったアプローチは適切さを欠いていること、また、土壌浸食や飛散は、人類の地表面に対する農耕や牧畜、開発、といったさまざまな関与が引き金となって連鎖反応的に引き起こされるダイナミカルな「自然現象」であり、その加速を抑えるには、感応性(sensitivity)の高い砂漠や黄土高原の特性を活かして、生態系が回復にむかうパスを人間の関与によって実現することが重要である、といった論点を提示している。この研究成果は基盤研究S「歴史学的視覚から分析する東アジアの都市問題と環境問題」の開催する国際シンポジウムで報告する。
|
Research Products
(6 results)