2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヘレニズム哲学におけるアカデメイアとピュロン派懐疑主義の位置づけとその現代的意義
Project/Area Number |
19520033
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
金山 萬里子 Osaka Medical College, 医学部, 教授 (10093189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 弥平 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00192542)
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Keywords | 自然学 / 倫理学 / セクストス・エンペイリコス / アカデメイア / 懐疑 / 相対主義 / 表象 / 認識 |
Research Abstract |
これまでのセクストスの三つの翻訳において、研究代表者と研究分担者は、訳者のあいだで分担は行なわず、翻訳、訳注、解説等すべてにわたって二人が関わり、テクストの読み方や解釈が異なる場合は相談の上いずれかを採用し、場合によっては別の可能性を注記してきたが、19年度の研究・翻訳作業もこの方針で進めた。 ただ19年度のうちに「倫理学者たちへの論駁」(第11巻)を完成させる予定であったが、研究代表者、分担者の両方が、G.E.R.Lloyd,Ancient Worlds,Modern Reflections,Oxford,2004の翻訳を進めるという仕事が入ってきたため、完成にまでは至らなかった。しかし、この研究書の翻訳作業は、「普遍の存在」や「例の使用」の考察を通して、古代懐疑主義の諸議論が現代の認識論、科学哲学、倫理学等に対してもつ意義に関する理解を深める結果になった。すなわち、現代の科学論でも問題になるパラダイム転換とその普遍性の問題、人間のパースペクティヴ的認識の限界、懐疑主義的な相対主義とドグマティズム的な実在論のあいだでどこに足場を据えるか、という問題である。 またプリンストン大学のChristian Wildberg教授、カリフォルニア大学バークリー校のG.R.F.Ferrari教授との交流を通して、イメージ・表象の世界が認識論の分野でもつ意味について大きな手がかりを与えられた。表象は、「把握的表象」という概念に認められるように、懐疑主義の諸議論の言わば戦場ともなった認識論的に重要な概念である。それだけでなく、自然学、倫理学においても、各立場のパラダイムを導くような重用概念なのである。
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Research Products
(6 results)