2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘレニズム哲学におけるアカデメイアとピュロン派懐疑主義の位置づけとその現代的意義
Project/Area Number |
19520033
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
金山 万里子 Osaka Medical College, 医学部, 教授 (10093189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 弥平 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00192542)
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Keywords | 自然学 / 倫理学 / セクストス・エンペイリコス / ヘレニズム哲学 / 懐疑 / 相対主義 / 論駁 / 現われ |
Research Abstract |
研究実績の第一は、セクストス・エンペイリコス『学者たちへの論駁3自然学者たちへの論駁、倫理学者たちへの論駁』(第9巻-第11巻)の公刊に漕ぎつけたことである。 第二に、翻訳の過程で得られた古代懐疑主義に関する知見として次の点を挙げることができる。 1「自然学者たちへの論駁」、「倫理学者たちへの論駁」に相当する部分は『ピュロン主義哲学の概要』にも含まれているが、議論は後者の方が明らかにより良く整理されている。 2「倫理学者たちへの論駁」においてはとくに相対主義的な主張が多く認められ、これをどう解するかが問題になる。相対主義と懐疑主義の矛盾と見えるものをR.Bett(Sextus Empiricus, Against the Ethicists)は強調しているが、矛盾する主張の双方を対置させるというピュロン主義の手法を考慮に入れるとき、セクストスが意図的に相対主義を利用している可能性は高い。 3個別の論駁においてはアグリッパの五つの方式に基づく論駁など、ピュロン主義に固有の議論も認められる。しかし自然学や倫理学のストア派やペリパトス派の概念に基づく「対人論法」による議論の多くは、ヘレニズム時代に議論を行なったアカデメイア派の議論に基づくと考えられる。 4現代の懐疑主義との関係では、自然学の領域では粒子論や連続体論との対比や、運動の概念に基づく懐疑主義的議論、善の客観的存在を否定する現代の倫理的懐疑主義との対照、ギリシアの認識論的懐疑と中国の実用主義的懐疑の相違など、興味深い知見を得ることができた。
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Research Products
(8 results)