2007 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀以降のフランス哲学における、現象学と科学認識論の関係に関する研究
Project/Area Number |
19520035
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
米虫 正巳 Kwansei Gakuin University, 文学部, 教授 (10283706)
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Keywords | 生命 / 個体化 / カンギレム / シモンドン / 認識 / 理念 / ロトマン / ドゥザンティ |
Research Abstract |
フランス現象学と科学認識論という二つの系譜の間には錯綜した関係が存在しており、その関係の検討を通じて、対立という表面的な現象によって隠蔽された事柄の解明を目的とする、という本研究の課題遂行のための作業として、平成19年度はまず、当該課題に関連する様々な資料の収集を行なった。次に、これら資料を生命と認識という二つの問題系に即して整理・読解する作業を行なった。そのことから次のような成果と見通しが得られた。 1.科学認識論の系譜におけるジルベール・シモンドンとジョルジュ・カンギレムの生命論の検討により、生命概念が個体化概念と切り離せないことが判明した。ここから今後の研究の基本的方向性を以下のように定めることができた。 (1)シモンドンやカンギレムの哲学における生命概念を、その同時代の極端な還元主義に走ってしまった成立期の分子生物学からではなく、その現在の進展から見直す必要性。 (2)科学認識論における生命概念を、現象学の創始者であるフッサールの後期の思索、あるいはエマニュエル・レヴィナスの現象学的探究に見られる生命概念と関係づける可能性。 2.科学認識論の系譜におけるアルベール・ロトマンの数理哲学の検討により、科学的認識における理念の概念の重要性を確認することができた。ここから今後の研究の基本的方向性を以下のように定めることができた。 (1)ロトマンの数理哲学を様々な仕方で継承する現在のフランス科学認識論者たちの成果を、認識の身分という問題に即して、フッサールやメルロ=ポンティにまで遡りつつ現象学的探究の流れと比較検討する必要性。 (2)ジャン・カヴァイエスとメルロ=ポンティの影響下にあって、科学認識論と現象学の境界で業績を残したジャン=トゥサン・ドゥザンティの哲学を手掛かりに、認識における意識と概念の関わりを追求する可能性。 3.また以上のことから、科学認識論と現象学を手掛かりに自然概念を再考する必要性が自覚された。
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Research Products
(1 results)