2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀以降のフランス哲学における、現象学と科学認識論の関係に関する研究
Project/Area Number |
19520035
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
米虫 正巳 Kwansei Gakuin University, 文学部, 教授 (10283706)
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Keywords | 技術 / ベルクソン / カンギレム / 生命 / アンリ / 自然 / シモンドン / ドゥルーズ |
Research Abstract |
科学認識論と現象学というフランス哲学の二つの系譜の間の錯綜した関係の検討を通じて、対立という表面的な現象によって隠蔽された事柄を浮かび上がらせることを目的とする、という本研究の課題遂行のための作業として、2009年度は2007年度・2008年度に引き続き、当該課題に関連する資料を収集し、それらを生命と認識という二つの問題系に即して整理しながら読解するという作業を行なうと共に、これまでの研究を踏まえて、3年間という研究期間全体の総まとめを行なった。その結果、以下のような成果が得られた。 1.認識という問題を技術という観点から見直すために、ベルクソン哲学における技術の位置づけについて考察し、技術と科学的認識の関係がいかなるものであるかを、ジョルジュ・カンギレムの技術論とベルクソンの技術論を対置させつつ検討した。それにより、技術と科学的認識の間に介入する生命というものについて再考する必要があると共に、技術と生命を共に包括することのできるような自然哲学を構築する必要性が判明した。 2.ミシェル・アンリの生命概念を考察の対象として取り上げ、エマニュエル・レヴィナスの生命概念と対照することで、アンリの晩年の思索における絶対的な生命の唯一性と生の二重化という二つの発想が両立可能がどうかを検討した。その結果、彼自身の初期からの哲学の基本的な構図に根本的な変化がもたらされることで、生命概念が拡張される可能性を見いだした。 3.シモンドンとドゥルーズの哲学を、彼らの自然概念を中心に比較検討することによって、ドゥルーズの自然主義がシモンドンの深い影響化にあることを明らかにし、またシモンドンの哲学に還元されないドゥルーズの独自性を浮かび上がらせることで、両者と共に自然哲学の現代的な可能性を展開すべき必要性を明確にした。
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Research Products
(3 results)