2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
赤松 明彦 Kyoto University, 大学院・文学研究科, 教授 (80159326)
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Keywords | バルトリハリ / 言語哲学 / 意味論 / 文意論 / インド古典文法学 / サンスクリット / マッラヴァーディン / 空華 |
Research Abstract |
バルトリハリ作『文章単語論』第2巻の写本の写真に基づいて校訂テキストを作成する作業を続けた。写真から起こしたディプロマティック・テキストをもとにして、現行の諸刊本との校合を行い、批判校訂版テキストの完成に向けた作業も行った。この作業は6割程度を完成した。また、校訂テキストをもとにして、XML文書化ツールを用いてテキストに関連する諸情報をタグとして埋め込み、「電子版研究ノート」としてそれを完成する作業も全体の6割ほどについては、作業を完了した。 「電子版研究ノート」によるテキスト分析(翻訳・注釈)の成果として、バルトリハリの思想の影響を強く受けた6世紀のジャイナ教の思想家マッラヴァーディンの議論法についての総合的な研究として、「パースペクティヴィズムおける空華」と題した研究発表を、スペインのバルセロナで開催されたインド哲学の国際学会で行い、参加者から高く評価された。これは、インド哲学の初期の段階における諸思想について相対的な立場から評価しようとしたマッラヴァーディンの議論法の特徴を、彼が繰り返し喩例として用いる「空華」の存在資格を問うことによって明らかにしようと試みたもので、テキストに現れる「空華」の全用例を分析するとともに、その思想の背後にあるパースペクティヴィズムの性格を、バルトリハリのそれとの比較によって明らかにすることを試みたもので、本格的なインド古典期初期の思想史研究として重要なものとなるはずである。
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