2007 Fiscal Year Annual Research Report
古代オリエントにおける誓いの研究-アッカド語文書を中心に-
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19520068
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
岩田 和子 (渡辺 和子) Toyo Eiwa University, 人間科学部, 教授 (00223397)
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Keywords | メソポタミア / 「宗教」概念 / 儀礼 / 呪術 / 誓約儀礼 / 慰霊 / 病気治療 / アッシリア学 |
Research Abstract |
平成19年度の実績は次の二つにまとめられる。 (1)近年メソポタミアの「宗教文書」に注目があつまり、多くの本格的な研究書の出版が続いている。他方、宗教学の領域では近代の「宗教」概念の問い直しが進められている。それにともなって,「儀礼」や「呪術」などの概念も再考される必要がある。ところが近代に開始されたメソポタミア宗教の研究はいまだに近代の諸概念を用いて行われている。このような問題点を指摘し、今後進むべき方向を展望した。この研究成果を論文として発表した(「古代メソポタミアの「宗教」研究をめぐって」『東洋英和大学院紀要』4、2008年3月)。 (2)楔形文字文書を研究するアッシリア学では、文書を内容によって「宗教文書」、「医学文書」などに分類して研究してきたが、そのような分類では見過ごされてしまうひとつのあり方について、いわば「宗教」と「医学」が融合したようなあり方に着目した。それは「アーシプ」と呼ばれる職能者が担う領域である。「アーシプ」は神殿に属し、多くの職能者からなる人々を従えて、儀礼、呪術、病気の治療にあたっていた。特に供養を受けていない死霊が引き起こす厄害および病気を治療する場合のさまざまなマニュアルを集めた文書群について考察を行い、その成果を発表した(「メソポタミアの『慰霊』と『治療』-死霊による災厄と『死の人称性』」東洋英和女学院大学死生学研究所編『死生学年報2008<スピリチュアル>をめぐって』リトン、2008年3月)。そのなかには、厄害をおこさないように死霊に誓わせる要素もあり、誓約儀礼のあり方の一つとしても興味深いものであることを指摘した。
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Research Products
(4 results)