2008 Fiscal Year Annual Research Report
古代オリエントにおける誓いの研究-アッカド語文書を中心に-
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19520068
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
岩田 和子 (渡辺 和子) Toyo Eiwa University, 人間科学部, 教授 (00223397)
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Keywords | 祈祷 / 呪術 / ヨブ記 / 誓い / 呪詛 / メソポタミア宗教 |
Research Abstract |
平成20年度の実績は次の2点にまとめられる。 (1)メソポタミアの「宗教」概念の再考のために、「祈祷」「呪術」「治療」などの概念でとらえられてきた要素を含むいわゆる「祈祷呪術文書」の分析を行った。またその問題は、近現代における「メソポタミア宗教」の研究史と密接に結びついている。A.L.オッペンハイム(1964年)が「メソポタミア宗教」について叙述されるべきではない、と論じたのは、メソポタミアの「宗教文書」においては「祈祷」と「呪術」が分かちがたく結びついていることがその理由の一つであった。しかし、それらが結びついていることは、宗教現象としてはまれではなく、むしろ西欧の研究者が立脚するキリスト教学、聖書学的なバイアスによって相容れないものとされたことを明らかにした。 (2)旧約聖書の「ヨブ記」の分析を通して、特に「ヨブ記」31章が法廷での証言、すなわち「過去のことについての誓い」の形をとっていること、それが、古代オリエントの誓いの表現法と並行することを示した。セム系言語においては、過去の事柄について「私は決して…していない」と証言する場合、「もし私が…したのであれば、私は呪われるように」というように条件説と自己呪詛が組み合わされる。しかし自己呪詛は省略されることもある。そのことから、条件説「もし私が…したのであれば」を「わたしは決して…していない」と訳されることも少なくない。しかし、「ヨブ記」31章では、自己呪詛を伴う文言が多く、条件説をそのまま訳すべきであることを示す。
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Research Products
(5 results)