2009 Fiscal Year Annual Research Report
古代オリエントにおける誓いの研究―アッカド語文書を中心に―
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19520068
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
岩田 和子 (渡辺 和子) Toyo Eiwa University, 人間科学部, 教授 (00223397)
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Keywords | 誓約 / 宗主権条約 / 契約 / アッシリア / エサルハドン / 申命記 |
Research Abstract |
1930年に法制史学者コロシェッツが、紀元前13世紀前後のヒッタイト帝国の「国際条約」文書を「宗主権条約」と「対等条約」に分けた。これに基づいて1954年にペルリットは、モーセの「シナイ契約」はヒッタイトの「宗主権条約」の形式をもつが、その形式はそれ以後すたれたので「シナイ契約」の成立年代は古く紀元前2千年紀末に遡ると論じた。しかし次の年の1955年にイラクのニムルドである文書群が発見され、それらを1958年にワイズマンが『エサルハドン宗主権条約』として公刊した。それは紀元前672年にアッシリア王エサルハドンによって発行されたものであったが、ワイズマンは紀元前7世紀まで「宗主権条約」は継続していたと主張し、さらに『申命記』のなかに類似の文言が含まれることから、ユダの王もこの「宗主権条約」を参加したと推論した。ワイズマンの主張についてはすでに報告者が論駁し、この文書を改めて『エサルハドン誓約文書』と命名した。しかし現在でも近代的概念としての「契約」は、「宗教」と「法・社会」の2領域に分けて論じられている。報告者は、19世紀以降に知られるようになったメソポタミアの文書資料はすべての近代的概念の再考を迫るが、『エサルハドン誓約文書』の分析によっても「契約」「誓約」「条約」などの従来の分類に問題があり、神が法的にふるまうことについて長い歴史をもつメソポタミアの文書に即してそれらを問い直す必要があることを示した。
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Research Products
(3 results)