2010 Fiscal Year Annual Research Report
米軍占領下の琉球列島におけるキリスト教交流史の研究
Project/Area Number |
19520071
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
一色 哲 甲子園大学, 人文学部, 准教授 (70299056)
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Keywords | キリスト教交流史 / 一国伝道史観 / 南島キリスト教史 / 國仲寛一 / 宮古南静園 / 日本基督教会(旧日基)の八重山伝道 / 八重山自治会(八重山共和国) / 宣教師と占領軍 |
Research Abstract |
本年度は本研究の最終年度として、沖縄島と宮古・八重山諸島を含む琉球列島のキリスト教交流史の歴史的構造についてフィールドワークを交えて全体的考察を行った。また、従来の日本キリスト教史やその周辺分野について主流であった歴史観を「一国伝道史観」として批判し、本研究の「キリスト教交流史(以下「交流史」)」が目指す理念や方法論を明らかにした。 まず、宮古諸島についてはフィールドワーク(文献調査と聞き取り調査)を行うとともに、沖縄島や本土に在住する当事者や遺家族の方に面会し、聞き取り調査を行った。そして、宮古キリスト教会の初代牧師である國仲寛一の関係者から自筆の日記や書簡等の資料提供を受けた。このことにより、戦後の宮古の教会形成について実証的に明らかにすることができた。次に、八重山諸島でも同様のフィールドワークを行い、戦後の教会形成を戦前からの伝道の流れで理解することができた。また、沖縄戦終結時から1945年末にかけて同諸島が直面した一種の「無政府状態」の中で形成された「八重山自治会亅(「八重山共和国」)の活動の中で戦後八重山の教会指導者たちが一定の役割を果たしたことを立証した。 最後の「交流史」の理念と方法論については本研究の成果を出版する際の前書きにあたる部分だが、この概念の意義と重要性は以下の通りである。まず、「交流史」ではそれぞれに地域ではさまざまなキリスト教が何回かにわたって到来し、地域の実情に合わせて受容されて、影響を与えている。したがって、従来の宣教師や牧師、教派・教団の伝道方針やそれらが伝えたものにより地域のキリスト教を規定するのではなく、地域の信徒や各個教会を歴史の主体としてとらえ直す必要がる。そのためには、国家単位ではなく、地域での民衆に共有されている歴史的体験から彼らの信仰のその発露である伝道活動に関する歴史的事例を丹念に掘り起こしていくことが必要になってくる。このことにより、従来、有力な牧師や宣教師に関してのみ語られてきたキリスト教や宗教の核心部分にあたる魂の救済への思考や行動を信徒の中身見出すことが可能になり、本研究にも大いに反映された。
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Research Products
(6 results)