2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520091
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八木 春生 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (90261792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
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Keywords | 中国 / 隋 / 敦煌莫高窟 / 仏教美術 / 統一様式、形式 |
Research Abstract |
隋時代の仏教美術を理解するには、首都西安で展開した仏教造像についての知識が不可欠である。だが現在西安およびその付近から出土した造像数は、十分と言えず、北周時代から隋時代への変化を理解しにくい状況にある。本年度は、旧北周領の仏教美術のひとつの事例として、西域との境に位置し五胡十六国時代からの長い歴史を持つ敦煌莫高窟についての考察をおこなった。敦煌莫高窟では隋第1期諸窟の造像が、敦煌莫高窟北周窟造像との強い繋がりを持つ。この時期西域美術や北斉仏教美術に起源を持つ形式をいくつか見いだせるが、それらは西安において北周美術の伝統と融合した結果造り出された、北周西安様式、形式の一部であった。続く第2期諸窟では二つの異なる工人系統が存在し、それぞれ隋時代初頭の西安およびその付近、また旧北斉の領域で展開し、隋時代初頭西安を中心に受容されていた仏教造像様式、形式を積極的に受容していた。そして第3期には、一見第2期諸窟のふたつの工人系統による造像様式、形式が融合した結果造り出された、敦煌莫高窟内での自立的展開によると考えられる像が存在する。しかし自立的な発展では説明できない細部形式が多く存在するため、北斉仏教美術に起源を持つ様式、形式が顕著になったとはいえ、これも直接的には西安から伝えられたものであり、その情報が流入したことが第3期移行への強いきっかけとなったと思われる。注目すべきはいくつもの工人系統が併存していたにもかかわらず、第3期諸窟の塑像のみならず壁画に描かれた菩薩像の着衣形式が、基本的に一致していることである。これも隋末から初唐にかけて西安およびその付近で流行した形式であった蓋然性が高い。そして第3期諸窟において、西安隋仏教造像の様相がかなり強く反映されるようになっていたと考えられ、第3期諸窟に影響を与えた西安隋仏教造像においても、その時期統一形式のようなものが形成され始めていたと結論される。
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Research Products
(3 results)