2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520096
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
尾関 幸 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 准教授 (10361552)
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Keywords | 友愛図 / ロマン主義 / 対概念 / 分かれ道のヘラクレス / ナザレ派 / ヨセフの物語 / カーサ・バルトルディ / フリードリヒ・シュレーゲル |
Research Abstract |
平成20年度は、11月初旬に行ったベルリンでの文献収集とマドリッドでの作品調査を中心とし、ロマン主義絵画固有の主題とされてきた「友情像」に原型的イメージを提供した画題として、対照的でありながら等価である二つの価値を視覚化する絵画主題「分かれ道のヘラクレス」に着目して分析を進めた。ヘラクレスを挟んで「美徳」と「悪徳」の擬人像が向かい合うこの図像は17世紀に完成するが(Panovsky,Erwin.Hercules am Scheidewege und andere antike Bildstoffe in der neueren Kunst.Berlin 1930)18世紀後半様々な主題へと応用され、主人公ヘラクレスの役割は、二つの相反する価値の優劣を決する裁判官から、両者の対話、融和を促し、その弁証法的な止揚を試みる「調停者」へと変化していく。「和解」「調停」といった主題は、フランツ・プフォル作《ルドルフ・フォン・ハプスブルクのバーゼル入城》(1810)、カーサ・バルトルディのフレスコ連作《ヨセフの物語》(1817)といったナザレ派の代表的作品でも、繰り返されている。赦し、和解によって生まれる、新しい芸術=宗教の福音の待望が、そこにはこめられているのである。こうした分析結果の一部は、シンポジウム「ロマン主義およびケルト・ルネサンスにおけるモノとたましい」(於:慶應義塾大学2009年2月22日)で発表した。 今年度は、(1)フリードリヒ・シュレーゲルら哲学・思想家の著作に見られる友愛の記述を追跡し、(2)「分かれ道のヘラクレス」から「和解・友情」の図像への変化の過程を具体的に追跡し時代精神としての「和解」の図像を浮き上がらせることによって、「対」概念のイメージに表象される時代精神を多角的に捉えなおし、年度末に論文として纏めることとする。
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Research Products
(2 results)