2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520096
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
尾関 幸 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 准教授 (10361552)
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Keywords | 友愛図 / ロマン主義 / 対概念 / アモルとプシュケ / フィリップ・オットー・ルンゲ / 冥界のイメージ / ナイチンゲール / アウローラ |
Research Abstract |
本研究の最終年度となる平成21年度は、ロマン主義絵画の友愛表現の原型的イメージの一つとされ、18世紀末から19世紀初期にかけて広範な流行を見せた図像「アモルとプシュケ」に焦点をあて、人間と神、生と死の二つの領域の境界に位置づけられる神話的人物プシュケが、フランス革命期、アンシャン・レジームの崩壊とともに再生の希望を担う存在として図像化されていく過程を究明した。その際、ドイツ・ロマン派の画家フィリップ・オットー・ルンゲの絵画作品《ナイチンゲールの稽古》(1805年)が「アモルとプシュケ」の主題を発展させたものであることから、プシュケ=ナイチンゲールに託された冥界の旅人のイメージが、バッコスやディアナといった「闇」や「酪酊」を意味する図像との等価的使用を経て、画家の晩年には再生と循環を象徴するアウローラのイメージへと変容する経過を明らかにし、論文に纏めた。対概念として表現される友愛図像は、分析的時代であった十八世紀を超克し、再び全体性を希求する時代精神から発しており、異なる世界を往来しながら半神となって完全性の実現をみるプシュケの図像にはそれが凝縮されているといってよいだろう。 以上の研究の遂行に関連して、9月末にはフィレンツェおよびミラノに赴き、「友愛」図像の形象的モデルとなったと思われるイタリア・ルネサンス期の絵画作品の調査を行った。
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