2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代ギリシャ絵画研究-新古典主義の受容とビザンティンの伝統
Project/Area Number |
19520108
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
木戸 雅子 Kyoritsu Women's University, 国際学部, 教授 (10204934)
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Keywords | 近代絵画史 / 新古典主義 / ロマン派絵画 / ギリシャ / 19世紀ドイツ / ギリシャ独立戦争 / オリエンタリズム / ポスト・ビザンティン |
Research Abstract |
ギリシャは、ギリシャ独立戦争以後ギリシャの国王となったバイエルンの王子オソン1世のもとで近代化したが、急激にギリシャに流入した西欧の文化によってその社会は大きく変貌する。本研究は、独立後に新たに学んだ西欧の影響を受けた絵画と彼らの民衆の造形表現であったポスト・ビザンティン時代のイコン画のスタイルを維持し、民族の独立の記録絵として独立戦争の戦闘図の連作をかかせたマクリヤニス将軍の試みなどを通して近代ギリシャにおける造形表現の創出がいかなるものであったかを考察するものである。 昨年度に引き続き、近現代ギリシャ絵画史の基礎的研究を続け、特に独立戦争をテーマにした絵画を中心に調べた。独立戦争の表象にテーマを絞ったことで、ギリシャ解放の当事者であるギリシャ人にとっての戦争と、西欧からの視点とを対比することができた。独立戦争を最初に絵画化したのは、ドイツ・ロマン派の画家たちである。ギリシャ人は、その主題と様式に大きな影響を受け、彼らにとって全く新たな絵画表現を学んだ。一方、西欧が同時代のギリシャに向けた眼差しはいかなるものであったのか。フランスはギリシャ独立戦争を主題にした作品が数多く描かれている。一般にヨーロッパにおけるグリーク・リヴァイヴァルは、イギリス人建築家によるアテネの古代ギリシャ遺跡の実測に始まるといわれ、その後新古典主義時代を通じてイギリスの古代ギリシャへの関心は絶えなかった。詩人バイロンがギリシャ支援のためにミソロンギに赴いたこともよく知られている。それにもかかわらずイギリスにおいては独立戦争そのものを主題とする絵画はきわめてわずかしか制作されなかった。ギリシャ側における西欧の美術の受容という観点で始めたが、独立戦争の表象というテーマを核にすると各国における相違小明確になり、さらにその相違の背景にあるものをそれぞれの研究分野で分担して考察を進めている。
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Research Products
(1 results)