2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520118
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Research Institution | Osaka University of Arts |
Principal Investigator |
石井 元章 Osaka University of Arts, 芸術学部, 教授 (90309162)
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Keywords | 小青銅像 / アントニオ・ロンバルド / アンティーコ / フェルラーラ / マントヴァ / 海馬(ヒッポカンポス) / 大理石の部屋 / ゴンザーガの壺 |
Research Abstract |
本年度は研究遂行期間が10月以降に限られたこともあり、チーニ財団での発表と報告論文執筆に多くの時間を割いた。2007年10月23日に行なわれた学会での発表では、マントヴァで活躍した青銅作家ピエール・ヤコポ・アラー・リ=ボナコルシ、通称アンティーコの初期の作品と考えられる《ゴンザーガの壺》(モデナ、ガレリア・エステンセ)と、アントニオ・ロンバルドがエステ家のアルフォンソ1世のために制作した大理石浮彫《ヘラクレスの凱旋》(サンクト・ペテルスブルク、エルミタージュ美術館収蔵)の形態上の相似を、エステ、ゴンザーガの両宮廷で行われていたパラゴーネ(諸芸術優劣比較論争)の一環としての新旧論争、およびマントヴァに嫁いだ姉イザベッラとフェルラーラの弟アルフォンソI世の間に存在した競争意識と絡めて論じた。この2作品の関係はこれまで等閑視されており、学会報告(2008年9月刊行予定)掲載予定の論文では、これまでアンドレア・デル・ヴェルロッキオの作品と考えられてきたが、近年アントニオ・ロンバルドがモデリングを行なったという説が提示されたヴェネツィア、サン・マルコ広場の旗竿台座浮彫を加えて、3者の関係を論じた。特に2匹の海馬と二輪戦車に腰掛けるネプトゥヌスやヘラクレスなどの神という構図を詳しく論じることにより、古代ローマの石棺彫刻に棹差しながら新しい図像を創設したのがアンティーコではなかったかという説を提示した。ビデオカメラを購入し、ウィーン美術史美術館とガレリア・エステンセで作品の撮影を行なうことができた。報告者の研究に資するところは大きいが、自ら撮影を行なう報告者の技術的未熟から、当初計画したようにアーカイブスとしてネット上に公開することは現時点では非現実的であると言わざるを得ない。パリ、ルーヴル美術館やフィレンツェ、バルジェッロ美術館などでの撮影は次年度に持ち越す予定である。
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